黒田一美議員が一般質問を実施

第307回定例会(12月)一般質問
2010年12月9日(木)

1 人口問題から見た兵庫の未来像について

 質問の第1は人口問題から見た兵庫の未来像についてであります。
 先日、10月1日現在の本県の推定人口が発表されました。559万3,621人であり、前年同月比で5,738人の減となっており、毎年の10月1日段階での推定人口の比較では、阪神・淡路大震災以降初めての減少となりました。これには、各地域の実情も含めて、いろいろな要因があるのかと思いますが、私は、人口動向が地域の勢いを最も顕著に示す指標であり、すなわち、県のあらゆる施策の効果を最も的確に反映する指標ではないかと考えます。
 例えば、兵庫県ホームページにデータ掲載されている最も古い1920年、大正9年の神戸市の人口は約75万人弱、但馬地域は約23万人で、現在の県民局単位では神戸市が1位、但馬は中播磨に次いで3位の人口を誇っていました。それが直近の国勢調査の2005年、平成17年では神戸市は倍増し約150万人、但馬は約4万人減の約19万人と、県全体の人口が約2.5倍になる中で、県民局単位の比較で8位となり、丹波、淡路に次いで、少ない方から3番目になってしまいました。
 また、最近の4、5年の増減の傾向を地域別に見てみますと、神戸市、阪神南、阪神北、東播磨が増えているのに対し、その他の地域は減少しています。また、東播磨は昨年から今年にかけては明石市や高砂市が減少に転じたこともあり、減少となっています。
 全体としては、県域だけで限定して見ると、神戸・阪神地域に他地域から人口が集中してきている状況がわかります。あまりに人口の偏在化が進むと、保育所や特養等の待機者問題、人口集中による都市防災上の問題、交通渋滞等の都市問題、また片方では、農村地域の集落機能の低下や過疎の問題等、あらゆる面での社会問題が顕在化してくることからも、人口の偏在化を一定抑えることが必要ではないかと考えます。
 そういう中で、県では、小規模集落元気作戦や地域再生大作戦の展開のほか、企業誘致や産業振興、農業や観光の振興によるまちおこしの支援により地域の活性化を図る取り組みを行っていますが、数字から見て人口偏在を食い止めるまでには至っていません。
 また、現在、21世紀兵庫長期ビジョンの点検・見直しを行っており、昨年度末に発表された中間報告においても、取り組むべき課題として、人口減少・偏在化への対応を上げており、地域ビジョンにおける検討も含めて、人口動向を詳細に分析した結果をビジョンに反映させ、今後の施策展開に生かすべきだと考えます。一方で、人口問題は全国共通の課題となっており、全国的にもこの課題解決に成功したと言える地域はあまりないように思います。そういう意味でも、農村部から都心部、瀬戸内海や日本海に面した地域から山間部まで、多様な姿を持つ兵庫県は日本の縮図と言われ、あらゆる面や角度からの施策展開ができ、その結果は全国から見ても大いに参考となるのではないかと考えます。県全体の人口が減少に転じたいま、県において人口動向を重視し、徹底的に分析し、その結果を施策に反映させる仕組みを構築すべきではないでしょうか。
 そこで、現在取り組む21世紀兵庫長期ビジョンの点検・見直しにおいて、人口偏在化問題を重視し、どのように新たなビジョンに反映しようとしているのか、また、地域ビジョンにおいても人口動向の分析結果を反映した施策展開を可能とするようなビジョンとすべきと考えますが、見直しの実施状況とあわせてご所見をうかがいます。

2 こども家庭センターの施設充実について

 質問の第2はこども家庭センターの施設の充実についてであります。
 兵庫県内におけるこども家庭センターへの虐待相談件数は、2009年度で1,557件であり、最近10年間で約3倍以上にふえています。また、全国的に見ても、厚生労働省から10年間で4倍となったことが発表されています。
 加えて、これらの虐待事案は、背景も複雑多様化してきていると思います。家庭の貧困、近隣住民との絆の希薄化などが要因にあると言われますが、最近の事例ではいろいろな要因が重層的に絡み合ってきており、保護された子どもに対するきめ細かな対応をはじめ、こども家庭センターをはじめ行政の果たす役割も複雑になってきています。
 そういう中で、これまでのソフト面に対する議論や指摘は多くなされてきましたが、今回、私はセンターの施設のハード面について質問をしたいと思います。
 中央、分室も含めて県内7箇所にある兵庫県の各こども家庭センターの建物については、中央を除いて、昭和30年代から50年代に建設されており、最も古い豊岡は昭和38年の建築から築後47年が経過しているとともに、健康福祉関係の施設でありながら、バリアフリー化されておらず、エレベーターもありません。また、健康福祉常任委員会の管内調査で訪れた西宮こども家庭センターでも、親や子どもがいろいろなことを打ち明けながら職員と相談を行うべき「相談室」は、冷たい雰囲気の色や材質の壁や床、古いパイプいすであり、明るく楽しくなるような飾り付け等、職員の方々によるいろいろな工夫もされているものの、心の底から打ち明けて話ができる雰囲気ではない印象を受けました。さらに、親子が一緒になって料理をすることで親子関係の改善を図る取り組みを実施している「調理室」についても、リニューアルして明るい雰囲気にする必要があると強く感じました。要するに、総じて老朽化が進んでいることから、こども家庭センターが果たすべき役割にも支障が出ているのではないかと思います。大きな社会問題となっている児童虐待の防止に向け、子供や親のために、さらに、必死に頑張っておられる職員の皆さんの取り組みを、十分な成果につなげるためにも、必要な施設の充実は行っていくべきと考えます。
 そういう中で、今定例会に上程された補正予算では、国の安心こども基金を活用して、こども家庭センターの老朽化対策として、相談室の改修や一時保護所の居住環境の改善に取り組むこととしておられ、児童虐待問題を施設面からも改善していこうという姿勢を一定評価しますが、一方で、1,200万円の予算でどの程度、実効性ある改善ができるのか疑問に思います。厳しい財政状況の中ではありますが、未来を担う子ども達を守り、心のより所となる施設として、抜本的な施設の充実を検討すべきではないでしょうか。
 そこで、こども家庭センターの施設の充実に向けたさらなる取り組みについて、当局のご所見をうかがいます。

3 ドクターヘリの運航支援について

 質問の第3は、ドクターヘリの運航支援についてであります。
 医師と看護士を乗せて患者の元に向かう救急医療用ヘリコプター、いわゆるドクターヘリを導入する自治体が増えています。ある新聞社の調べでは、2012年度までに37道府県に配備されると報道されており、急速な広がりを見せています。
 本県においても、京都府、鳥取県との3府県共同により、今年4月から公立豊岡病院を基地病院とするドクターヘリの運航を行っており、10月末までに511回運航され、当初予測の年間230回程度を大きく上回る実績となっています。
 ドクターヘリの導入により、緊急患者のいる救急現場に医師・看護師を素早く送り届け、すぐに救命処置ができ、適切な医療機関への迅速な搬送が可能となります。まさに、一分一秒を争う緊急患者への適切な治療が、いち早く行われることで、救命率の向上や後遺症の軽減に大きな効果があります。高速交通事情が悪い但馬地方を含む山陰地方の方々にとって、ドクターヘリの運航は「いのち」に直結した取り組みであり、県としても、その安定運航のため優先して支援していくべきと考えます。
 そういう中で、健康福祉常任委員会の管内調査で現地の公立豊岡病院を訪問した際、関係者から一分一秒を争う緊急患者への対応ばかりであることを考えると、ヘリコプターの格納庫、給油施設が少し離れた但馬空港にあることへの不安の声を聞きました。その課題について、今定例会に上程された12月補正案において、国の「住民生活に光をそそぐ交付金」を活用して、早急に問題解決を行っていこうとしておられ、その点は高く評価します。また、一方で、雪の多い地域にあって、今後の冬季における運航確保への危惧もあり、その対策も早急に検討する必要があると考えます。
 このような課題解決を繰り返しながら、今後とも効率的、効果的な運航を継続的に行っていただきたいのですが、一番の問題は年間2億1千万円にも及ぶ運航経費に係る継続的な財源の確保にあると考えます。今後、ドクターヘリの運航をはじめ、広域医療については徳島県を事務局として関西広域連合で取り組まれることとなりますが、各府県とも同様に財政状況が厳しい中にあって、「いのち」に直結した施策として、兵庫県として継続的な財源の確保をしっかりと行っていってほしいと考えます。
 そこで、ドクターヘリの運航について、継続的な財源確保等の問題点への対応も含め、今後の支援に対する県の考え方をおうかがいします。

4 人と自然が共生する川づくりについて

(1) 生物多様性に配慮した河川整備について

 質問の第4は、人と自然が共生する川づくりについてであります。
 まず、生物多様性に配慮した河川整備についておうかがいします。
 今年10月、名古屋市で生物多様性条約第10回締約国会議、国連地球生きもの会議が開催され、2020年に向けた生態系保全の目標「愛知ターゲット」等を採択して、閉幕しました。20世紀型乱開発が続けば、「地球上の生物は滅亡に向かう」との人類の反省から1992年に締結された生物多様性条約が、18年経過して、ようやく具体的な大きな前進を見たと評価されています。
 それに先だって、本県においても平成21年3月に総合的指針として「生物多様性ひょうご戦略」を策定し、さらに平成21年度には、事業実施時に配慮すべき事項をとりまとめた「生物多様性配慮指針」を河川、道路、港湾・海岸の公共工事等の分野で作成されています。
 そういう中にあって、特に河川には多様な生物が生育し、それらの生物を含めた河川と人間が古来より共生しながら人々に豊かな恵みを与えてきました。河川が生物の多様性を保つ上で重要な役割を果たすことを認識し、人間の生存の基盤となっている生態系を長期的に安定させ、生物資源を持続的に利用するためにも、地域固有の生物の多様な生息・生育環境を確保し、河川のもたらす様々な恵みを活かしていくような、河川整備を行っていく必要があると考えます。
 そこで、生物多様性配慮指針に基づく取り組みをはじめ、生物多様性に配慮した河川整備について、どのように取り組んでいかれるのか、おうかがいします。

(2) 適切な維持管理等による福田川、小川流域・「小川フィールド」の自然保護・保全について

 次に、私の地元であります福田川とその支流の小川の流域・「小川フィールド」の自然保護・保全について、おうかがいいたします。
 垂水区の福田川では、災害の発生を防止し、地域住民が安全・安心に生活できる環境を確保する目的で、都市基盤河川改修事業が行われてきました。市街地を流れる都市河川であり、両岸とも護岸の形状であるため、もとの河川環境に復元することはできませんが、河川工事の施工に当たっては、自然環境に配慮した工法を採用して、良好な自然環境や景観の保全に努めることを基本とし、魚介類の遡上・降下に配慮した落差工、床どめの段差の解消や、多様な生息環境を形成・保全していくため、増水・渇水時における魚介類の避難場所の確保及び植生の再生・保全に適した工法を積極的に取り入れて実施され、水鳥の生息にも配慮された施工となっています。
 また、その維持管理においても、県、神戸市、地元住民が協力のもと、清掃・除草活動等に取り組むとともに、地元の子供たち等を対象に福田川の豊かな自然と親しむイベントを開催するなど、参画と協働によるさまざまな取り組みが実施されております。その成果として、魚もコイ、フナ、オイカワ、カワムツなど多く戻ってきており、鳥もセキレイを初め、カモ、オシドリも飛来し、カワセミも発見されております。
 さらに、その上流の須磨区との境を流れる小川流域周辺は、南は桃山台、北は友が丘の住宅開発がなされた地域ですが、里山をはじめ非常に豊かな自然が残された地域となっております。多様で豊かな生物種が生息しており、沢ガニ、川ムツ、ニホンミツバチの群生、チョウでは、アサキマダラや、環境省の絶滅危惧種であるツマグロキチョウをはじめとする貴重な種が生息しております。地元地域の方々は、里山を含めたこのエリアを「小川フィールド」と名付け、自然保全を求める活動も活発です。各種の貴重な生き物の生息を地元の方々が発見し、記録し、各種発表会でも紹介しております。このような中、地元地域の方々は都市住宅街に残されたこれほど豊かな自然が、住宅や道路の開発で破壊されないか非常に不安に思われています。
 これらの都市住宅街に残された貴重な自然環境を保護・保全するため、県においても、神戸市、地元住民等と連携した適切な河川の維持管理を引き続き行うとともに、特に、このような豊かな自然が残る福田川支流・「小川フィールド」を、都市部の子ども達が生物多様性を学び、里山保全活動を行う環境学習の場として、自然保護の必要なエリアと位置づけ、内外に発信するなど、福田川や小川の流域の豊かな自然を守っていく取り組みが求められます。
 そこで、豊かな自然を有する福田川や小川流域について、県として適切な河川の維持管理はもとより、神戸市や地元住民等と連携して自然環境の保護・保全に取り組むべきと考えますが、ご所見をおうかがいます。

5 明石淡路フェリー休止に伴う雇用対策について

 質問の最後は、明石淡路フェリー休止に伴う雇用対策についてであります。
 明石市と淡路島を結ぶ明石淡路フェリー、愛称たこフェリーは、先月15日をもって、昭和29年から半世紀以上にわたった運航にいったん幕を下ろしました。そして、全従業員約70名のほとんどが同日付けで解雇となり、そのほとんどの方の再就職先が決まっていない状況にあります。
 解雇された従業員とその家族の方々にとっては、先行きが見通せない非常に不安な状況にあり、運航については、明石市の支援決定等により、淡路ジェノバラインが経営を引き継ぎ、来年3月を目処に運航再開するとの発表がありましたが、運航再開に向けて候補としている船はこれまでたこフェリーで運航に使った船の半分以下の規模であり、解雇された職員のうち再雇用されるのは一部だけとの報道がありました。
 明石淡路フェリーは地元住民の移動手段、交通経路として重要な役割を担うとともに、大規模災害時においても避難や救援物資の代替輸送にあたるライフライン確保の要として運航されてきましたが、明石海峡大橋の開通、そして一昨年からの世界的な経済危機に端を発する経済の低迷、燃料価格の高騰に加え、明石海峡大橋等の高速道路料金の割引など、フェリー運航への様々な厳しい逆風の中で、社員の給与カットや経費削減など懸命な努力を重ねて、運航を継続してきましたが、ついに力尽きたというものであります。
 現下の厳しい経済・雇用情勢の中で、バブル崩壊以降、毎年全国で6千社から多い年には約2万社もの会社が倒産し、現在、全国で約300万人もの人が失業している状況の中の一つの出来事と思われるかもしれません。しかし、これまで地域住民の生活を支える航路存続のために、会社とともに懸命な努力を積み重ねて、運航を継続してきた従業員の方々にとって、今回の運航休止による解雇は、経済情勢だけが原因でなく、大橋の建設や通行料金割引等、行政が行ってきた施策や取り組みの結果の影響によるところが大きく、国、県、地元市等の行政により、解雇された職員の再就職に向けた支援を行っていくことが求められます。
 そこで、明石淡路フェリーの休止に伴い解雇された職員に対して、兵庫県として、緊急雇用対策での何らかの対応を検討するほか、関係機関と連携した再就職に向けた支援に急ぎ取り組むべきと考えますが、ご所見をうかがいます。

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