永富正彦議員が代表質問を実施

第306回定例会(9月)代表質問
2010年9月28日(火)

 先週は厚生労働省に復職された、村木厚子さんの素晴らしい笑顔がありました。本当に良かったと思います。それにしても、時の主任検事の逮捕は我が国の信頼社会が揺らぎかねず、国家の危機にもつながりかねません。信頼社会は社会存立の基礎でありますが、まさに「信」無くば立たずの感が致します。私は県民の皆様から寄せられている県政への信頼を更に揺るぎないものにするため、民主党・県民連合議員団を代表して、以下9項目にわたり、知事並びに関係当局に質問を致します。

1 行財政構造改革の推進について

 質問の第1は行財政構造改革の推進についてであります。
 本県では、将来に向けて持続可能な行財政基盤を確立するため、平成20年10月に「新行革プラン」を策定し、職員の定員・給与を始め、事務事業、投資事業など、行財政全般にわたる改革を進めています。
 この新行革プランについては、現在、行財政構造改革の推進に関する条例による3年ごとの総点検・見直しを行っておりますが、我が会派においては、これまでから主張してきたように、検討・協議に当たって、1つには、県民誰もが納得できる優先順位を捉えた改革とすること、2つには、現在の行財政環境を巡る動向が極めて不安定であることを踏まえ、大胆な見直しをすることを含め、実態に即した財政フレームとすること、3つには、トップダウンではなく現場の職員の声を反映すること、そして4つには、医療、福祉、教育、治安など県民の安全・安心を高めるための行財政基盤の確立が本来の目的であること、つまり以上4点の視点を踏まえながら、事業仕分けと併せて、継続の中での確実な改革、転換こそが信頼される行政の取り組みであることを基本に、財政面だけでなく、活力ある元気な兵庫の実現に向け、政策面も含めた創造的な改革への検討・協議を行っていくべきと考えます。
 個別項目については、まず、県民局組織の再編について、再編後各地で生じた想定外の豪雨等による自然災害をはじめ、新型インフルエンザや口蹄疫等への対応等、県民の安全安心を第一に考えたときに、果たして再編が適当だったのか、その見直しも含めて十分な検証を行う必要があると考えます。特に組織体制については、地域が抱える課題や特性への対応体制として、各県民局に担当参事を配置されていますが、地域課題等に対し、より的確な対応ができるよう、さらなる組織体制の改編も検討すべきと考えます。
 また、公社等外郭団体について、先日発表された平成21年度決算見込みでは、県の将来負担比率は前年度から6.3%増え、366.4%となり、早期健全化基準の400%に近づいています。特に、将来、県が負担する見込みである多額の負債等のうち、約800億円が公社に関連する負担額であります。重い金利負担も考えれば公社改革は行革の中でも最重要課題と言えます。各公社が公共の目的から見て本当に必要なのか、公社経営評価委員会での審議のみならず、財政面、政策面の両面からの根本的な事業仕分けが必要ではないかと考えます。
 さらに、自主財源の確保について、特に、法人事業税超過課税については、経済情勢の悪化等、企業を巡る情勢が厳しい状況にある時、産業分野における事業の一般会計の単なる補填ではなく、企業等が将来を見据えた成長への取り組みができるような事業、あるいは中小企業をはじめとする兵庫県産業の底上げを図る事業に特化して充当すべきと考えます。
 そこで、限られた財源の中で、県民意見を十分に踏まえた、実効ある県民本意の行財政構造改革とするために、具体的にどのように総点検・見直しを進めていこうとされているのか、ここで指摘した観点での考察も含め、お考えをお伺い致します。

2 21世紀兵庫長期ビジョンの点検・見直しについて

 質問の第2は21世紀兵庫長期ビジョンの点検・見直しについてであります。
 厳しい経済・雇用情勢や歯止めのかからない少子・高齢化等が進み、我が国全体が長期にわたって深い閉塞感に覆われ、将来不安を解消するような明るい兆しがなかなか見えてこない状況にあります。
 そういう中で、本県では行財政構造改革を断行しておりますが、その推進と並行して、県民に対して本県の将来に元気が出るような政策を明確に示すことが重要と考えます。私は、その役割を果たすのは、21世紀兵庫長期ビジョンであり、その点検・見直しに当たっては、そういう視点での検討が重要となってくると考えます。
 一方、新行革プランの総点検・見直しにおいても、時代潮流の変化を踏まえた検討を行っていますが、行革を断行した先にある将来の本県がめざす姿である21世紀兵庫長期ビジョンについては、同じ視点で検討する必要があります。また、その検討結果については、並行して県民にわかりやすく伝えていくことが、痛みを伴う厳しい行革の実施に対する県民への理解・協力にもつながり、極めて重要と考えます。
 加えて、先日、厚生労働省から発表された労働経済白書によると、働く人の3分の1が非正規労働者で大半が年収300万円以下とあり、戦後の経済成長によって克服したはずの「貧困」が時を経て再び私達の目の前に現れつつあると指摘しています。これは、本県での生活保護者が95,000人にもなるなどの経済格差や、健康格差、教育格差等の格差社会の問題で、雇用情勢の悪化とともに注目されてきていますが、年間4万件を超える児童虐待案件、年間3万人を超える自殺者の問題等の多くの社会問題の要因にもなっているとも言われており、県民が最も不安視している部分ではないかとも思われます。そういう部分について、まさに長期展望に立ったしっかりとしたビジョンのもと全部局で取り組むことを県民に幅広くアピールすることは、将来に対する県民の不安解消を図り、将来の兵庫に希望を持てる政策を県民に示すこととなると考えます。
 そこで、現在取り組んでいる21世紀兵庫長期ビジョンの見直し・点検の進捗状況を伺いますとともに、ここで指摘した観点も踏まえ、今後どのように見直し・点検を進めようと考えているのかお伺いします。

3 関西広域連合について

 質問の第3は、関西広域連合についてであります。
 我が国では、政治、経済、文化の中心を戦後60年かけて東京に一極集中させ、中央集権による政治が行われてきました。その結果、地域に根ざした文化や産業が衰退し、将来への不安、閉塞感が漂っています。
 そういう中で、昨年8月の総選挙による政権交代以降、この国のあり方を大きく転換し、地域に元気を取り戻すため、多様な地域ニーズに沿った政策のもとに、住民参加による行政を実現する必要があるとして、民主党政権においては地域主権改革を強力に推進しています。
 このような状況の中で、井戸知事が中心となって近畿、中四国の各府県で進めている関西広域連合については、国内初の府県境を超えた広域行政組織であり、国の地域主権改革を地方から先導して推進する取り組みとして早期設立が望まれます。
 関西広域連合は、見直しが進む国の地方支分部局の事務の受け皿となりうることはもちろんのこと、我が国経済全体に閉塞感が漂う中、特に低迷している関西経済の浮上に当たって、産業振興、観光振興などの多様化する地域課題に対応し、関西のことは関西で決定、実行できる自立型システムを確立し、関西浮上の起爆剤となることが期待されます。
 関西広域連合への取組みは、関西が一丸となって取り組む必要があると考えますが、奈良県が不参加であったり、参加しない事務のある府県があるとともに、神戸市をはじめとした政令市の参加状況が不明確であるほか、広域連合での意思決定方法等に参加各府県での意見の相違があったことなど、各府県によって参加スタンスや進捗状況が相当異なっていることが気になるところであります。
 しかし、本格的な広域行政実現の第一歩として、まず、目標としている年内発足に向け、他府県への働きかけも含めて、当局、議会が一丸となって取り組むとともに、関西全体での盛り上がりによるさらなる促進を図る意味でも、認識が乏しい市町や県民への周知に努める必要があります。
 そこで、関西が一丸となった取り組みという観点も含めて、関西広域連合の設立に向けた今後の予定、さらに今後の展望についてお伺いします。

4 地域福祉の充実について

 質問の第4は地域福祉の充実についてであります。
 人や地域の絆の希薄化が指摘される今日、国では、人々の支え合いと活気のある社会をつくることに向けた、様々な当事者の自発的な協働の場として「新しい公共」を掲げ、人や地域の絆を作り直すことを宣言しました。すなわち、活力ある「共に生きる社会」をつくるために、行政、団体、住民、企業等の当事者が役割を持って参加する協働の場、つまり行政が責任を持つ公的領域と住民や企業などの私的領域との中間にある社会的領域を、それぞれ社会のみんなで担っていこうとするものです。
 高度経済成長の時代、あらゆる住民要求を行政が取り込んできました。そして、少子・高齢化社会を迎え、住民の要求も多種多様となっています。しかし、行政は大きな枠での支援はできますが、高齢者福祉等地域福祉に関する身の回りの小さな部分には対応できなくなっています。
 そういう中で、県においては、地域福祉支援計画を策定し、市町の地域福祉計画の策定を支援するとともに、市町社会福祉協議会との連携も含めて、県民の安心・安全の確立のために、計画的に地域福祉を推進しています。
 市町地域福祉計画については、公的な福祉サービスの対象とならない課題などを、様々な担い手の参画のもと取り組むしくみづくり等を行うものであり、地域の絆の再構築による地域福祉の推進には不可欠なものと認識しておりますが、県下の現在の策定状況は24市3町、65.9%に止まっており、県による早期の策定指導等が求められます。
 また、地域の社会福祉協議会は、従来から地域福祉の充実に大きな役割を果たしてきましたが、市町合併によりかつて旧町村単位で措置されていた人員、予算、活動拠点が整理統合・削減されて、地域の絆の確保、地域福祉の推進に従来から果たしてきた役割を果たせなくなっていると聞きます。
 さらに、少子高齢・人口減少社会を迎え、家族世帯の小規模化や価値観の多様化による地域の連帯感の希薄化、あるいは支え合い機能の低下に加え、過疎化の進行により地域の支え合い機能の維持そのものが困難となってきています。地域の社会福祉協議会が「新しい公共」を担って、行政と福祉事業者の間で従来のようなきめ細かな地域福祉が推進できるよう、人口規模、面積等の地域事情に応じて地域福祉の専門職員が配置できるような支援を行うなど、地域福祉の推進体制を確立することが求められます。
 そこで、市町地域福祉計画の策定支援、市町社会福祉協議会への活動支援等を含め、地域の絆の再構築による地域福祉の充実に向けた今後の取り組みについて、ご所見をお伺い致します。

5 介護保険施設について

 質問の第5は介護保険施設についてであります。
 我が国においては、急速な少子・高齢化が進み、2010年の高齢化率は23.1%であり、2025年には30%に達するとも言われています。本県においても同様に高齢化率は22.4%と高い数字を示しており、まさに超高齢社会を迎えています。一方で、高齢化の進展の速度に比べて社会のシステムの対応は大幅に遅れていると思います。
 中でも、制度発足から10年を経過した介護保険制度については、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるようなサービスを確保し、当時社会問題化していた社会的入院を解消し、在宅介護を推進する方向で導入されました。しかし、更なる高齢化の進展等による要介護者の増加や、人材不足等に加え、家族で介護をするにも限界があります。そのようにいろいろな要因が重なり、制度発足時より施設入所を希望する方が多く、その施設不足が制度導入以降、なかなか解消されないことが大きな課題となっています。
 そのような施設不足により、特別養護老人ホーム等の施設に入所を申し込んでおられる方の総数は県内で約2万5千人、全国では42万人おられ、入所申込者のうち、入所コーディネートマニュアルにより施設入所が優先される、いわゆる施設入所待機者は、現在、県内に3,495人おられるという現状があります。この問題については、これまでから本会議等で何度も取り上げられており、一刻も早い施設整備が待たれるところです。そういう中で、各市町において施設整備が進められていますが、介護給付に係る費用が保険料に反映される現在の制度の中では、居宅サービスよりも施設サービスの方がその費用が高額であることなどから、制度発足当時はほとんどの市町が月額2千円台であった第1号被保険者の保険料も、現在では多くの市町が月額4千円台となっており、これ以上の増額を伴う新たな施設整備は困難な状況となっております。
 国においては、平成24年度の制度改革に向け、孤立化のおそれのある「高齢単身・夫婦のみ世帯」への生活支援を基本目標に追加し、見守り付き高齢者向け住宅などを充実させる方針が首相から示されるとともに、特別養護老人ホームについて居室面積基準を引き下げる方針が示されるなど、制度改革に向けた動きが活発化しています。そのため、現場の実情を踏まえ、介護保険施設の整備を国民や地方の負担を増やすことなく進めるよう、県、市町等の地方が一体となって、国に働きかけていく必要があると考えます。
 一方、県においては、介護保険施設の整備を行う事業者に対し支援を行い、計画的な整備推進を行っていますが、平成21年、22年度の整備予定分で1,620床余りであり、待機者の半分にも満たない状況にあります。待機者問題の放置は孤立高齢者を生じさせることにもつながるという観点からも、国の提案にある居室面積基準の引き下げなども含め、待機者解消に向けた実効ある取り組みの早急な実施が必要と考えます。
 そこで、介護保険施設への入所待機者が多数となっている現状に対する認識と、今後、県としてその解消に向け、いかに取り組んでいこうと考えているのか伺います。

6 児童虐待の防止について

 質問の第6は児童虐待の防止についてであります。
 兵庫県内におけるこども家庭センターへの虐待相談件数は、2009年度で1,557件でありますが、2005年度は958件、1999年度は518件であり、10年間で約3倍以上にふえています。全国的に見ても、全国の児童相談所が2009年度に対応した件数は過去最高の4万4,210件で、10年前の4倍となったことが、厚生労働省から発表されています。
 この数字は虐待件数でなく相談件数ですが、報道等により、全国で様々な児童虐待事案が頻発しており、事態が深刻化していることは言うまでもありません。中でも、食べ物も水も与えず、3歳と1歳の子どもをワンルームマンションに何ヶ月も放置した結果、死亡させた大阪の育児放棄の事案は、あまりの痛ましさに言葉を失いました。
 また、これらの虐待事案は、背景も複雑多様化してきていると思います。家庭の貧困、近隣住民との絆の希薄化などが要因にあると言われますが、最近の事例ではいろいろな要因が重層的に絡まり合い、行政等に求められる対策も重層化してきていると考えます。
 兵庫県においても、昨年11月に三田市で虐待死亡事案が発生しました。それを受けて、県においては、中央こども家庭センターに調整参事を配置し、県内機関の調整や情報交換の強化を行うとともに、児童虐待防止委員会での検証も進められ、先日報告書が提出されました。
 報告書では、「かけがえのないものを次代につなぐ思いを共有し、子育てを支え合う社会の実現」が提言されていますが、最近の事案を見ていると、職員へのケアや体制整備がまず必要であることは言うまでもないものの、行政だけの力では限界があり、県民への啓発活動のさらなる強化を図るとともに、子どもは地域全体で守り育てるという環境づくりが不可欠だと考えます。
 米国の小児科医で、虐待対応の礎を築いたケンプ氏は「虐待であるにもかかわらず判断を誤って保護せずに生命を落としてしまった子どもに謝罪するくらいなら、虐待ではないのに間違って子どもを保護したときに親に謝罪する方がまだいい」と言います。関係職員だけでなく、国民全体がこのような気持ちで子どもを守っていかなくてはならないのではないかとも思います。 
 そこで、最近の全国各地での事案等に対する当局の認識を伺いますとともに、児童虐待防止委員会からの提言を踏まえた新たな対策、今後の取り組みへの考え方等についてご所見をお伺いします。

7 実効ある雇用対策の推進について

 質問の第7は実効ある雇用対策の推進についてであります。
 我が国の経済・雇用情勢は、一部に持ち直しの動きがあるものの、景気回復は減速傾向を示しており、加えて急激な円高も進行し、明るい兆しは確認できないような状況にあります。
 そういう中にあって、国においては、6月にまとめた新成長戦略で環境や介護・医療などで500万人の雇用を創出することを目標に、これまでの新たな雇用への奨励金に加え、雇用の増加に応じて企業の税負担を軽減する措置等行う方針としており、「雇用」を基軸とした経済成長をめざしています。加えて、8月以降の急激な円高等に伴う経済危機対策として、予備費等を活用した経済雇用対策を講じることとしています。
 県でも、6月の段階では景況、需要、雇用とも持ち直しの動きがありましたが、急激な円高等による輸出を中心とした大企業への影響が中小企業にまで及び、県内情勢にもマイナスの方向に反映してくるのは確実ではないかと推察されます。
 そういう状況の中にあって、国の補正予算等に基づく緊急雇用就業機会創出事業及びふるさと雇用再生事業や、新規学卒者等への就職支援などに県では取り組んでいますが、成果として一定の雇用は創出しているものの、県民1人1人が効果を実感するにはほど遠い状況と思われます。
 県民意識調査による回答でも、県政への期待として、「雇用安定と職業能力開発」が最も多かったとの結果が出ています。つまり、雇用対策は県民が県の取り組みを最も期待する分野であります。
 そのような県民の期待の高い雇用対策について、今年度までの3カ年計画として「ひょうご経済・雇用活性化プログラム」により推進していますが、来年度からの次期プログラム策定に当たっては、これまでの対策をしっかりと検証するとともに、社会経済情勢の変化に的確に対応したプログラムとし、県民が実感できる効果を生む雇用対策を講じなくてはならないと考えます。
 また、県では企業誘致に力を入れて取り組んでおり、その結果、平成16年から20年の5年間で敷地面積1,000㎡以上の工場461件の立地が実現しておりますが、その一方で、5年間で約88億円もの立地に関する補助を行っております。それが本県の雇用にどの程度結びついたか、しっかりと検証を行い、今後の取り組みにつなげていく必要があると考えます。
 そこで、過去5年間の企業立地策を含めた雇用創出への取り組みの成果を伺いますとともに、このような更に厳しさを増す経済・雇用情勢の中で、国の対策に呼応した県としての経済雇用対策の実施を含め、実効ある対策が必要と考えますが、ご所見をお伺いします。

8 県の特性を踏まえた「兵庫の農業」の担い手育成対策について

 質問の第8は県の特性を踏まえた「兵庫の農業」の担い手育成対策についてであります。
 先日農林水産省から発表された2010年農林業センサスの速報値によると、農業就業人口が2005年に比べて22.4%減の260万人となり、統計として比較可能な1985年以降最大の減少率となりました。これは、農業就業者の平均年齢が65.8歳と2005年に比べ2.6歳高くなっていることにより、高齢化が進んだことで離農する農家が増えたことなどによると考えます。また、過去1年以上作付けされず、この数年間に作付けされる見込みのない耕作放棄地の面積も2005年に比べ1万ha増え、40万haとなっています。
 また、本県における農業就業者については、2000年の約108,000人から2005年には約94,000人と約13%減少しており、今回の全国における速報値から勘案しても、2010年においても前回以上の大きな減少率となっていることが予想されます。
 そういう中で、本県では「ひょうご就農支援センター」を設置するなどして、新規就農を支援し、2009年度の新規就農者は180人と2年連続で県が目標とする年間200人を概ね達成しています。一定の成果を収めていることは評価しますが、農業への就業人口の減少が進む中、更なる取り組み強化が求められます。
 また、本県の農業従事者の構造として、兼業農家が全体の約80%、約4万5千戸と全国で4番目に多い現状があり、高齢化に伴う離農による農業従事者や担い手の減少により、農業により支えられてきた農村地域における集落機能の維持にも大きな影響を与えるのではないかと危惧します。そういう点で、都市部だけでなく、農村地域においても人や地域の絆の希薄化が進むことが危惧され、集落機能の維持という観点からも担い手育成対策が強く求められています。
 一方、国においては、平成23年度から戸別所得補償制度が本格実施される予定であり、農政が大きく転換しようとしています。そういう中で、本年度から先行実施される戸別所得補償モデル対策の加入申請については、7月末で全国132万戸のうち、兵庫県は76,393戸と全国一の加入申請件数となっており、県では来年度の本格実施に向け順調に進んでいるものと認識しております。
 同制度は、スイス等でも実施されており、地方への定住促進等にも効果を上げています。特に兼業農家が多い本県では、同制度をうまく活用して、多様な担い手の育成・確保による集落維持等にもつなげていくべきと考えます。
 そこで、兼業農家が特に多い本県の特性を踏まえ、さらには国における農政の大きな転換である戸別所得補償制度も十分活用しながら、「兵庫の農業」の担い手育成を総合的に進めていく必要があると考えますが、これらの取り組みについてのご所見をお伺いします。

9 教職員の勤務環境の改善について

 質問の第9は教職員の勤務環境の改善についてであります。
 児童生徒に対する学習指導や生活指導をはじめ、研修、保護者や地域住民との関係づくりなど、教職員の勤務実態はあらゆる面で多忙化しています。
 平成18年度に全国の公立学校を対象に文部科学省が行った勤務実態調査によると、教員一人当たり1ヶ月に30時間を超える残業と、本来は行うべきではないのですが、持ち帰りによる仕事を行わざるを得ないという勤務実態が明らかになりました。また、本県においては、平成20年に実施したアンケート調査の結果、県内の公立小・中学校に勤務する教員の残業時間が全国平均より約20分長く、休憩時間もほとんど確保できず、9割を超える教職員が多忙であると感じていることが明らかになりました。
 多忙化の背景には、成績処理や進路指導等の本来業務の複雑・多様化に加え、週休日等に及ぶ部活動の指導のほか、地域や保護者からの様々な要望に伴う学校の課題、役割の拡大による教職員の業務範囲・内容の拡大、そして当然のこととして生徒の成長のためには何事にも全力で取り組み、労力や時間を惜しまない教職員の職務に対する責任感などがあります。
 このような現状を踏まえ、県教育委員会では、平成21年3月に「教職員の勤務時間適正化対策プラン」を策定し、県、市町教委、関係団体、学校が一体となって、様々な取り組みを実施することにより、超過勤務時間20~30%の削減をめざして取り組んでいますが、現実には多忙化の解消にはつながっていないのではないかと考えます。
 そのような勤務実態の常態化の結果、教員の多忙等によるストレスを原因とする精神疾患が急増しており、兵庫県においては平成11年度から10年間で約3倍、平成20年度で321人となるなど、教員のおかれている現状は極めて厳しいと言えます。また、これらに起因する休業者の増加が、多忙な業務をさらに圧迫している状況にもあります。
 このような教員の多忙化が続くことにより、本来じっくり行うべきである教材研究をはじめ、いじめや不登校などの問題行動への対応、教員が生徒と向き合う時間の確保等に支障が生じる懸念があります。教員の負担軽減を図るなど勤務環境を改善し、教員が本来の業務である授業や生徒指導などに常に創意・工夫を凝らし、児童生徒と向き合う時間をより確保するために、教員が意欲的に働きやすい環境を整備する必要があると考えます。
 例えば、早朝練習、休日練習等への対応も行っている教職員の部活動への指導については、研修を十分に行った上で、地域の外部指導者を導入するなど、社会教育の観点での地域との連携した取り組みを推進すべきと考えます。ドイツでは地域のスポーツクラブをまちぐるみで支えていて、世代間交流や社会教育の場として浸透し、地域への愛着を育む力になっています。また、愛知県犬山市のように、外部指導員を公費で採用し、積極的に支援しているような自治体もあります。
 学校を巡るこのような状況の中で、教員は地域や保護者の信頼を得るためには何事にも労力や時間を惜しまず取り組まざるを得ないという状況があります。一方で、より良い教育を行うには、教育内容について教員同士が十分に打ち合わせができるようなゆとりや、教員と児童生徒が十分に向き合える時間の確保が不可欠なことは言うまでもありません。
 そこで、多忙化する教職員に対して、授業や生徒指導の充実や生徒と向き合う時間をしっかりと確保するための、実効ある教職員の勤務環境改善対策について、どのように考えているのかお伺いします。

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