竹内英明議員が代表質問を実施

第305回定例会(6月)代表質問
2010年6月8日(火)

1 地域主権改革と県のあり方について

(1) 分権社会を迎えるに当たっての知事の決意と県議会の役割について

 去る4日、民主党の菅直人代表が内閣総理大臣に指名され、本日、新たに菅内閣が発足する予定となっております。夏に国民の大きな期待を得て、政権交代を成し遂げて8ヶ月あまり。衆議院選挙で国民の皆さんにお約束したマニフェストの実現が途中の段階で「普天間基地移設」と「政治とカネ」の問題で鳩山内閣が総辞職したことについては、国民の皆様に率直にお詫びしなければならないと思います。しかし、私は、民主党がマニフェストで掲げたこの国の歩むべき方向性である「政治主導」や「地域主権」、「こども優先」の考えについては、間違っていないと思っております。その中でも、特に、マニフェストの1丁目1番地とされる「地域主権」改革については、兵庫県の今後のあり方にも大きく影響してくる重要な課題でありますので、まずこれについて伺います。
 民主党の「地域主権改革」とは、「日本国憲法の理念の下に、住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにするための改革」であり、具体的には、自治体の能力・規模に応じた権限と財源の移譲、国と地方の二重行政の解消等を実施することであります。
 今国会にも、地域主権改革推進法案、国と地方の協議の場法案、地方自治法改正法案の地域主権関連3法案を提出しております。
 これまで国がこと細かく規定していた法律や政省令による「義務付け・枠付け」を見直し、地方の条例で地域の実情に応じた基準へ変更できるようになること、地方自治に影響を及ぼす国の政策立案等について事前に関係大臣と地方六団体の代表者が協議する場を設けること、また、地方議会の定数が自治体独自で決められるようになるという内容であります。
 この法案については全国知事会など地方6団体からも「地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組む真の分権型社会の実現のために必要不可欠なものである」との共同声明が出されておりますが、まさに「地域主権」の実現に向けた最初の一歩であります。
 ここに今から82年前の1928年昭和3年に行われた、日本初の普通選挙で、当時の政権与党「立憲政友会」が掲げた選挙ポスターのコピーがあります。
 「国民諸君は何づれの姿を望むや 地方分権 丈夫なものよ ひとりあるきで 発てんす 中央集権は 不自由なものよ 足をやせさし 杖もろふ」
 なぜ昭和3年当時から地方分権が選挙の公約だったのか?それは明治維新により進められた中央集権化の歪みがこの時既に出ていたからであります。
 まず第一点は地方の財政問題です。明治政府は廃藩置県により藩の権限の多くを中央政府に移すとともに、税についても、藩の年貢を地租に改め、政府の国税に変更しました。これによって、地方の自主財源が失われ、補助金頼りになり、地域に応じた施策ができなくなっていたのです。
 もう一点は東京への一極集中傾向であります。日本の都道府県は、1888年明治21年には現在とほぼ同じ区域の47道府県体制となっていますが、当時の人口は新潟県が1位で170万人。次いで東京府が160万人(3位は兵庫県で156万人でした。1893)でした。それが35年後、この選挙が行われた1928年昭和3年には東京府の人口は510万人と、35年で3倍以上にも増加していました。新潟県の人口も190万人とやや増加していますが、人口動態は社会減となっています。政府が殖産興業を推進する過程で、身分制の廃止や居住の自由もあって、多くの農民が農村から都市部の労働者へと変わっていったからであります。新潟県の人口の社会減は当時から現在に至るまでその傾向は変わっていません。一方、東京はその後、人口の伸びこそ落ちついてきたものの、大阪から東京へ本社機能を移す企業もいまだ見られるなど経済の中心としての役割は落ちる兆しがありません。進学や就職を契機とした若年層の流入傾向も変わっていません。ヒト、モノ、カネが東京圏に集中する構図は明治維新からずっと続いております。
 「中央集権は 不自由なものよ 足をやせさし 杖もろふ」。地方の足がやせても、杖つまり補助金を潤沢にもらえる時代ならまだしも、国も財政悪化で配れる杖がありません。明治政府の中央集権による富国強兵・殖産興業政策は、当時の驚異的な国力の伸長をみれば正しかったわけですが、中央集権・一極集中による成長は限界を迎えたということであります。一極集中を是正し、多様性のある自立的で活力ある自治体や圏域を複数実現させ、地域の実情・特性を踏まえた迅速・効果的な政策展開を可能にするとともに、圏域相互間、更には海外の諸地域との競争・連携により、国全体の成長を促進していく、それが分権改革なのです。
 本県でも、5月13日、井戸知事、原県議会議長、県下の市長会など県内地方六団体により、「兵庫県地方分権推進自治体代表者会議」が開催され、「義務付け・枠付けの廃止」や「一括交付金制度の創設」のほか、国の出先機関の事務については「原則地方移管、状況に応じて廃止、民営化すること」とするなど踏み込んだ「地域主権改革に対する緊急提言」をされております。今後、国の「義務付け・枠付け」が廃止され、基準の変更等が県条例で行われるようになれば、知事の責任も重くなり、条例を審議する県議会の責任も同様に重くなります。
 そこで、今後、分権社会を迎えるにあたり、知事としての決意と、これから県議会にどのような役割を期待するのかお伺いします。

(2) 国から県への権限移譲について

 中央省庁の出先機関の廃止について、省庁側は都道府県にまたがる広域的な事務をはじめとして受け皿がないなどとして反対しております。関西広域連合もその受け皿になると言われておりましたが、その実現が遅れており、他の地域では受け皿となる機関も全く検討されていないところもあります。こうした状況では、広域ではなくても、まず都道府県でできるものから実施するという考えに立たないと一歩も進まないと考えます。
 全国知事会の「国の出先機関原則廃止PT」では、都道府県単位で存在している労働局、労働基準監督署、ハローワークの事務について、国の役割を統一的な基準の設定に限定し、他の全ての事務を地方に移管することを求め、特にハローワークについて2012年4月から移管すべき最重点項目に位置づけました。しかしながら、厚生労働省の労働政策審議会等では、「職業紹介は全国ネットワークで行う必要がある」として、反対の意思を表明しています。
 「ハローワーク」は職員数が全国で1万人にも及び、兵庫県内には22か所のハローワークと500人の職員がいる大きな組織でありますが、都道府県単位で設置されております。また、都道府県でも、職業訓練や生活保護などの福祉行政を行っており、地元企業や教育機関とのネットワークが都道府県にあり、それらと連携することで総合的な雇用、福祉行政の展開が可能となることから、ハローワークの事務を都道府県が受けることは十分可能であり、二重行政の排除にもなります。
 そこで、兵庫県は財源保障などの条件がクリアされれば職員の受け入れを含め事務を受ける覚悟があるのかお伺いします。

(3) 県から市町への権限移譲について

 5月24日に公表された都道府県から市町村への各省庁の分権勧告への回答を見ると、権限を移譲するという回答は、対象の384項目のうち、207項目と2分の1にとどまりまっています。
 「NPO法人の設立認証権限の政令市への移譲」や「薬局の開設許可を保健所設置市へ」などの207項目は移譲が可能だが、残り半分は専門性、広域性等を理由に困難としています。中央省庁が、都道府県から市町村への権限移譲に抵抗するのは、自らの分権につながることを恐れていることや、都道府県の一部にも市町への移譲に反対している内容があること、市町村側にしても受けたくないと考えているところもあるようです。
 兵庫県でも、09年2月に、「中核市から市まで拡大」とされた「特別養護老人ホームの設置認可」をはじめとする359事務の移譲についての意向を市町に対して尋ねた県のアンケートに対し、「『先んじて受けたい』と手を挙げた県内市町はなかった」とし、「現状では、市町は移譲を望んでいない」「これらの事務を効率的にこなすには、30万人規模の人口が必要」と県の担当者が指摘しているとの報道もありました。
 今回の「地方主権改革に対する緊急提言」でも、県から市町への権限移譲の推進については、「実態を無視した事務の押しつけや事務の受け皿整備のためのさらなる合併の押しつけ等にならないよう配慮すること」とされています。同じ提言で「国の出先機関の事務は、原則地方移管」としつつ、県から市町への移譲は、先んじて受けたいところもない、押しつけにならないよう配慮せよと。県の権限は大きく増える一方で、基礎自治体への移譲は進まないということでは、「補完性の原理」という地域主権改革の理念が色あせてしまいます。
 一方で、全国的にもっと権限を受けたいという基礎自治体もあります。神戸市は先月、指定都市市長会として道府県と同格の「特別自治市」制度を創設し、道府県からの税源移譲などを求める提言を国に提案したところであります。また、姫路市・尼崎市・西宮市が参画する中核市市長会も、県費負担教職員の人事権の移譲を求める提言を国に対して、行っております。
 そのような流れの中で、独自に権限を移譲しようとしている自治体もあります。大阪府では、小中学校の教員の人事権を5つの市町教育委員会に移譲する予定で、早ければ2011年から実施されるとのことです。
 そこで、県から市町への権限移譲をどのように進めていくのか。県費負担教職員の人事権の移譲など基礎自治体からの具体的な権限移譲の提案に対して、どのように考えているのか併せてお伺いします。

2 関西3空港問題について

 4月12日、兵庫県や大阪府、国土交通省等で構成される「関西3空港懇談会」の模様が多くのメディアに報道されました。伊丹・神戸空港の存廃をめぐる議論の中で、井戸知事と大阪府の橋下知事がお互い一歩も譲らずヒートアップしている姿であります。結果的に、存廃に関しては明記されず、橋下知事がその点を除いて賛成したということでしたので、兵庫県の主張が通ったと、そのように思っていました。
 しかし、その2週間後の4月24日、国土交通省の成長戦略会議が検討していた関西国際空港の経営改善案の全容が報道されました。国が出資する持ち株会社が、関空会社と伊丹会社を経営統合するというもので、両空港の一体的な「事業運営権」を民間事業者に売却し、1.3兆円超の関空会社の債務圧縮に充てるというものでありました。その翌日には大阪府の橋下知事と前原大臣が会談し、報道された案で概ね合意したとされ、最終報告も同じ内容が提出されております。
 この最終報告には神戸空港の記載がなかったことから知事や神戸市長が神戸空港も一元管理するように言及すると、橋下知事は「伊丹と関空が、神戸空港に影響されたくない。明確に切り離さないといけない」と記者団に語ったといいます。また、大臣との会談では橋下知事が持論の伊丹空港廃港を求め、リニアが大阪まで来たときという前提ではあるものの「将来的には伊丹の廃港も考えざるをえない」と大臣に初めて伊丹の廃港に言及させたともいわれています。
 たった数週間前に「関西3空港懇談会」で橋下知事を押し切る形で合意した内容が、いつの間にか、変わっております。
 いずれにしろ、財務省も凍結していた今年度の関空会社への補給金75億円を執行し、以降の補給金も継続する方針ということです。結果として大阪府に優位に事を進められようとしているといえば言いすぎでしょうか。兵庫県民の利便性や経済効果を考えたとき、伊丹は必要な空港でありますが、大阪府知事にとっては関空が生き残るためには、伊丹の廃港が必要だと思っており、自治体間競争の様相を呈しております。
 そこで、関西3空港問題について、最終的には国が決定権をもっている中で、県として今後どのような戦略で関西3空港に関する施策決定に関与していこうとするのか知事のご所見をお伺いします。

3 関西広域連合(仮称)について

 関西広域機構(KU)の分権改革推進本部が最初の本部会議を開催し、関西広域連合の設置について検討を始めたのが2007年10月でした。翌2008年には、具体的準備を進めることで基本合意し、さらに、2009年には「2009年中の設立を目指す」ことなどが申し合わされました。しかし、いま2010年6月を迎えましたが、今議会にも設立のための議案は提出されておりません。
 井戸知事は、年内までの適切な時期に関係議案を提案したいと発言しておりますが、近畿2府4県では奈良県が不参加を決めており、京都府や滋賀県も現在のところ議案の提案は難しい状況と聞いており、特に京都府が入らないとなると、設立自体も厳しいと考えております。
 一方で、大阪府の橋下知事は東京の一極集中に対抗していくために、大阪都構想に力を入れておられます。これは、大阪市と堺市を廃止して11の特別区に分割するとともに、豊中市など9の市を特別区にそのまま移行させ、大阪都のもとに20区を設置するなどの構想であります。
 橋下知事はこの「大阪都」構想に賛成する地方議員らと新党を結成し、来年の統一選にも、多数の候補を擁立するとも言われております。大阪都の実現性やその内容等については不明な点も多いのですが、府県とは権限や税源が異なる大阪都ができ、従来からの道州制関西州の主張とあわせて考えると、大阪都はまさに関西州の州都とでも言うべき状況になります。
 また、橋下知事の度重なる伊丹廃港要求や神戸空港を一元管理から除外するよう求める発言に対して兵庫県としてどう対応するかの問題もあります。
 そこで知事は、大阪都構想やその実現、道州制に関係なく今後も関西広域連合を進めていくのか。また、橋下知事の伊丹・神戸空港をめぐる発言は、不快だけれども、そうしたことは横において、今後も橋下知事と一緒に関西広域連合を立ち上げていこうと思っておられるのか、知事にお伺いします。

4 県財政の現状と今後について

(1) 新行革プランの見直し案の策定について

 本県では、新行革プランを策定し、約1兆2000億円の収支不足に対処しております。このプランでは、新たな起債による借金や企業庁からの借り入れなどの特別な財源対策である3,520億円を除き、11年間の歳入歳出改革によって8,760億円の収支改善を行うとしてきました。
 しかし、歳入歳出改革といっても、その内訳をみると歳入改革による効果額は590億円とわずか6.7%であり、一方、歳出改革による効果額は8,170億円と全体の93.3%を占めています。県の行革プランの大半は、歳出削減の取り組みということです。
 歳出削減に取り組む姿勢として、知事の20%の給料カットをはじめ、議員、職員も含めて人件費を削減してはや3年目であります。しかし、給与カットも際限なくいつまでも続いていいかというとそうではなく、財政指標に一定の改善が図られるなどして、持続可能な財政状況となった時には、その働きに正当に報いるべきであります。
 そのために今回の新行革プランの見直し案の策定にあたっては、県民の皆さんや職員の皆さんからみてもはっきりわかる財政指標を一定の基準として取り入れるべきではないでしょうか。例えば、将来負担比率の目標を設定し、それがクリアできれば、給与カットを終了するなどであります。将来負担比率の他の都道府県との相対順位や平均値などはっきりと誰もがわかる数値目標とリンクさせることで更なる歳出削減や債務の削減等に、より積極的に取り組むことが可能と考えます。
 そこで、この提案を含めまして、実効性のある新行革プランとするためにどのような見直しを行おうとしているのか、知事のご所見をお伺いします。

(2)将来世代の負担軽減のための税のあり方について

 2009年度末の国債や借入金などをあわせた「国の借金」総額が882兆円、国民1人あたり693万円にもなっていることが公表され、利払い費だけでも9兆円を超えるなど、国の財政は大変なことになっています。
 東京大学の伊藤元重教授が先日「次世代 重税に納得するか」と題する文章を新聞に寄稿しておられました。将来世代による「なぜ過去の政府の放漫な財政運営のつけを自分たちが重税という形で負担しなくてはいけないのだ」という議論を紹介した上で、「政府の借金の金額が膨らむほど、それを返済するための税の負担は重くなる。税の負担が重くなるほど、その時点での国民の反発は大きくなってしまう。」そして「こうした状況を想像してみると、重い債務を抱えた国家とは実に悲惨な状況だ。国民が政府を信じず、政府は何も意欲的なことができない。政府と国民の間に信頼関係が築けなくなってしまう」と述べられております。
 先送りすればするほど、次世代の負担が重くなることははっきりしており、また、先送りができなくなった時点で存在する国民が重税で負担するということによって、その時に国民に批判されるのは先送りしてきた過去の為政者ではなく、重税をお願いする時の為政者であります。これまで、歳出の削減には消極的で、選挙による敗北を避けるために、国民から嫌われる増税からも逃げてきた為政者は何の責任も問われない。右肩上がりの経済成長が終わりを迎えてもなお、これを続けてこられたのは、借金によって負担を先送りしてきただけのことであります。将来世代の負担には思いを致さず、「今さえよければいい」という発想の結果が、この国の今の財政状況であります。
 「子孫に美田を残さず」という諺があります。これは西郷隆盛の『西郷南洲遺訓』の中に記されている「児孫(じそん)の為に美田を買わず」という西郷の家訓が元になったと言われています。自分の子や孫を甘やかしてはならないという戒めを言ったものですが、甘やかすどころか、子孫に多くの借金を残そうとしている。モラルハザードであります。
 「政府の借金」について、アメリカで最も尊敬される大統領の一人、独立宣言を起草したトマス・ジェファーソンの「為政者は『統治される者の同意』を尊重しなければならない」という考えを紹介したいと思います。
 アメリカは、独立前はイギリス領で、イギリス本国並みの税金を課せられる一方、アメリカの代表はイギリス議会の議席がありませんでした。自分たちの代表が出席しない議会で決められた税金を払わされることにアメリカ住民は反発し、「代表なければ課税なし」という課税の原則を主張して独立運動は始まりました。最終的に独立戦争となり、アメリカは勝利しますが、戦費については銀行から多額の借金をして調達しています。
 ジェファーソンはこの政府の借金を批判します。「資金調達という名前で子孫が支払うことになる金を遣うという行為は、未来に大規模な詐欺行為を行うことである」と。なぜなら「代表なければ課税なし」とイギリスに要求したことと同じく、戦費であっても借金のつけを同意のない子孫に回してはならないと考えたからであります。その後、1801年に自らが第3代大統領に就任すると、その就任式の演説で、(独立戦争で発生した)「債務を誠実に返済し、神聖な国民の信頼を維持すること」を宣誓しました。ジェファーソンの言う、為政者は「統治される者の同意」を尊重しなければならない、次世代には及ばないという考えは、特に為政者自身が肝に銘じる必要があると思います。
 いずれにしろ、同意のない将来世代に更につけをまわさないためには、歳出対策だけでなく、歳入対策にも取り組まなければなりません。
 民主党では、歳入、税全体の議論をする中で、「地方消費税」の議論を始めることとしています。先の県等の『緊急提言』の中でも「地方消費税の充実強化」を提言しておりますが、地方の自主財源として、偏在性が少なく、安定した税財源として全国知事会からも同様に充実の要望を受けています。現在の消費税5%、うち国が4%で、地方は1%ですが、1%でも兵庫県には直近の決算(20年度)で1075億円が入り、うち半分は市町に交付するとはいえ、約500億円もの自主財源となっています。
 地方消費税が拡充されれば地方自治体に大きな自主財源をもたらします。しかし、税率を上げる説明責任や有権者からの選挙での審判という辛い役回りは国が負うことになります。今回の緊急提言もその点も十分踏まえての提言だと思います。知事としては現在の地方消費税1%という現状を充実強化すればいいと考えておられますが、現行税率で国と地方の配分を変える余裕は国にないことは明らかであり、地方消費税を拡充する場合は消費税全体の税率を上げなければなりません。
 そこで、知事として、地方消費税や全体の消費税は何%が望ましいと考えているのか、いつから地方消費税を上げるべきと考えておられるのか、お伺いします。

5 子育て支援について

 5月5日のこどもの日の新聞各紙に「日本の15歳未満の子供の数が比較可能な1950年以降の最少を更新したこと、また29年連続で減少したことが報じられていました。急速な少子化の進行は、労働力人口の減少や経済成長の鈍化、高齢化社会の進展、税や社会保障費の負担増、そして地域社会の活力を低下させるなど、我が国にとって最も深刻な問題といっても過言ではありません。29年連続ということに愕然としました。
 また、高齢化・過疎化により、65歳以上の高齢者が人口の半数以上を占め、集落の維持が困難となっている限界集落も増加しています。今年3月末に姫路市において唯一複式学級があった山之内小学校が廃校となったことを知り、今年度の県下の自治体ごとの複式学級の状況を調べてみました。最も多かったのは宍粟市の7校、続いて神戸市と豊岡市が5校、篠山市、神河町の4校など、県下には計50校に複式学級があることがわかりました。県下の公立小学校数は798校、つまり6.3%の小学校に複式学級があるということになります。神戸市に5校あるということも驚き、このまま子どもの数が減り続ければどうなるかと危惧するところであります。
 人口は女性1人が生涯に生む子どもの数である合計特殊出生率が2.07を越えて回復しない限り、減少するとされていますが、去る2日に発表された2009年の日本の出生率は前年度と同じ1.37と4年ぶりに上昇がストップしました。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、2005年に1億2776万人だった日本の人口は、2055年には、平均的な中位推計で「8993万人」と30%も減少すると予測されています。現在は、3人の現役世代で1人のお年寄りを支えているのが、2055年には1人が1人を支えることとなります。私がもし生きていれば、81歳になりますが、その時の現役世代がどれだけの年金保険料と税金を支払うことになるのか想像もつきません。また、最も楽観的な高位推計でも今より2,800(2,825)万人減、最も悲観的な低位推計では4,500(4,539)万人も減るとされています。人口政策を転換しなければ、日本が経済成長を続けること自体も難しいことは明らかであります。
 こうした考えを背景に、政権交代によって今年度から子ども手当の創設など思い切った少子対策に舵を切りましたが、政府の「新成長戦略」の中にも新たに日本経済が歩むべき基本方針として「地球温暖化(エネルギー)対策」と「少子高齢化対策」が掲げられました。
 政府が少子化対策として参考にしているのはヨーロッパの先進国、その中でもフランスでありますが、1993年には1.65まで低下していた出生率が、2008年には2.00にまで戻り、ヨーロッパの主要国で1位となっています。2005年の家族関係社会支出にかける国の予算を比較してみるとフランスがGDP比で3%なのに対して日本は0.8%と、同じ時期に少子化になったにもかかわらず、力の入れ方が全く違っております。
 一例をあげれば、フランスの子供の数に応じ支給される家族手当ですが、所得制限なしで第2子以降に、20歳になるまで支給されます。この他にも妊娠手当など30もの家族給付手当があります。保育所や在宅の認定保育ママ制度など保育環境も充実し、幼稚園から大学まで公立学校の学費も全て無料です。もちろん、女性が働きやすく、仕事と家庭の両立が可能な社会であることや、事実婚で子どもを産む割合が高いこと、消費税が約20%と日本とは比較できない面もありますが、国民が手厚い少子対策を受け入れている理由は、フランスが度重なる戦争を経験し、「人口=国力」という考えが背景にあること、社会的にも「子供は社会の財産」という認識があること、「人口が増えれば、将来、確実に税収が上がる先行投資だ」と考えられているからです。子ども手当の支給について日本では批判もありますが、先進国ではこうした直接給付型の永続的な取り組みがないとどうしても少子化になってしまう。今回の国の方向性は間違っていないと思っています。
 兵庫県の人口も、平均的な中位推計で2035年には480万人と今後25年で現在の560万人から80万人も減少する推計であります。2005年度に策定した「ひょうご子ども未来プラン」では、出生数目標を年5万人として様々な課題に取り組み、約4万7千人台だった出生数は、約4万9千人とやや回復するとともに、出生率も1.25から2008年の1.34へ回復しました。会派としても少子化対策調査特別委員会等を通じ、法人県民税の超過課税を活用した、多子世帯の保育料軽減、子育てと仕事の両立支援などを提案し、それらを実現してこられたことを、大いに評価しております。
 しかし、本県の昨年の出生率は1.33とわずか0.01ではありますが4年振りに低下し、少子化の回復が踊り場にあることも明らかになっています。今年3月に策定された「新ひょうご子ども未来プラン」では、今後5年間(平成23~27年)の出生数目標を24万人と設定しています。国の子育て支援策が強化されることとあわせ、県の最重点施策として引き続き目標の実現に向けて取り組んでいただきたいと思います。
 そこで、このたび策定された、「新ひょうご子ども未来プラン」の目標達成への決意についてお伺いします。

6 県立高校の学区の見直しについて

 昨年9月にOECDが公表した加盟国の2006年のGDPに占める教育費の支出割合についての調査によると、比較可能な28カ国で日本は3.3%と下から2番目でありました。上位は北欧勢が占め、最下位はトルコであります。ヨーロッパの先進国では日本の高校にあたる中等教育は無償が基本であり、大学などの高等教育も無償の国が多く、教育費の比率が高くなっているのですが、ようやく日本でも高校の実質無償化が導入されました。
 川端文部科学大臣は国会での大臣所信の中で「個々人の潜在能力を高め、様々な分野で活躍する多様で重厚な人材層を育むことが、わが国の成長と発展の土台である」と述べておられましたが、教育とは人材への投資、これも成長戦略の一つであります。一歩前進ですが、引き続き、家庭の経済力で子供の教育格差が生じることのないよう、教育を受ける機会の平等を図らなければなりません。
 県において、現在、生徒の選択肢確保の観点から、県立高校の学区のあり方を検討しておられますが、県教委が設置した「兵庫県高等学校通学区域検討委員会」が4月に出した中間まとめでは「生徒にとって望ましい選択肢の観点から、現在の16学区を見直し、通学区域を広げる方向での検討を進める」としています。
 他の都道県の状況を調べますと、全県1 学区のところが増え続けており、今年から導入した宮城県を含め21都県もあり、更に高知県も2年後に移行する予定であります。
 一方、現在、兵庫県の16学区は、北海道の19学区に次いで全国2番目に多く、10 学区以上あるのは兵庫を含め4 道県しかありません。本県の場合、普通科を例にとると、南但、淡路学区の3校から姫路・福崎学区の12校まで選択できる学校数の地域格差が大きいことも見直し理由に挙げられていますが、教育を受ける機会の平等の観点から、実際に通学区域を広げるメリットは生徒にとって大きいと思います。
 しかし、一方で遠方から通う生徒が増え、学校と地域のつながりが低下したり、人気が特定の学校に集中することも考えられます。見直しに当たっては生徒や保護者の意見をはじめ様々な声を汲み上げるとともに、学区内のそれぞれの普通科高校を、特色ある学校、魅力ある学校にしていくことも併せて考える必要もあると思います。
 そこで、今回の県立高校の学区の見直しは、実に1964年度以来の大きな見直しとなりますが、学区見直しは何学区程度を想定し、また実際の導入年度など、どのように検討しているのかお伺いします。

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