杉尾良文議員が一般質問を実施

第304回定例会(2月)一般質問
2010年2月26日(金)

1 人口減少社会に対応したビジョンづくりについて

 我が国は今、人口減少時代に突入し、少子高齢化、労働力不足をはじめとする大きな社会問題に直面しており、その対応が急がれています。
本県でも人口は近いうちに減少局面に転じるとされていますが、先日、知事は提案説明の中で、「今、変化の時代と言われています。その変化の兆しをしっかりと捉え、進むべき道筋を見定めなければなりません。」と述べられています。
 「人口減少時代をどう生きる2020年の日本人」と題した、経済学者で政策研究大学院大学教授の松谷明彦さんの著書では、人口減少が日本人の働き方、住まい方、過ごし方に何が起きるのか、経済の量的、質的な変化の下でどのような経済社会システムが築かれるべきなのかが解説されています。
 また、今年1月に、松谷教授の講演を聞く機会がありましたが、その講演では、人口減少の大きな原因として、高齢者の急増による死亡者数の増加、出生者数の減少が挙げられるが、出生者数が減少する要因は、既婚者の出生者数は変わらない中で、子どもを生む女性の数、すなわち出産年齢の女性人口が減っていることにあり、今のままでは人口減少に歯止めがかからないのではないかと述べています。
 少子対策では、結婚し子供を生み育てる環境整備が重要であり、一方、高齢者対策では高齢化に対応した社会経済システムの構築が必要と思われますが、先進国の高齢化率を比較すると、現在、日本は21%、アメリカ13%、イギリス16%、フランス16%、ドイツ20%となっており、2050年の推計では各国が概ね20%台から30%程度と予測される一方、日本は40%程度に達すると予測されています。
 松谷教授は、アメリカ・シカゴでは、一人当たりのコストを下げるために高齢者を都市に集めて施策の効率化を図っているという事例を紹介しています。 高齢化に対応していくためには、都市と農村の連携を図ると同時に、都市でできること、農村でできることを機能分担し、グローバルに取り組んでいく、新たな社会システムが求められていると述べておられます。1つには、高齢者の生活コストを下げること、具体的には、住宅、公共賃貸住宅を増やすなどによって、社会的なストックを充実する。2つには、スクエアー(空間)、すなわち好きなように過ごせる多目的で、安価に活動できる施設があることなど、お金のかからない生き方が可能な街をつくることによって、スローライフな気持ちに余裕が持てる社会をつくることが必要であると述べておられます。
 兵庫は日本の縮図と言われますが、都市部の高齢化、郡部の限界集落など、人口減少と少子高齢化を見据えたさまざまな視点から地域づくりを考えていかなければならないと思います。
 そこで、さまざまな時代潮流の変化や人口減少社会のもとで、元気で豊かな地域社会を目指していくために、どのような視点で今後の全県ビジョン、地域ビジョンづくりに取り組んでいくのか、当局のご所見をお伺いいたします。

2 指定管理者制度について

 平成15年の地方自治法改正によって、公の施設のより効率的・効果的な管理を行うため、その管理に民間の能力を活用するとともに、住民サービスの向上などを図る仕組みとして、指定管理者制度がスタートしました。
 我が会派では、昨年12月に、「全面委託で地域に開かれた博物館を」コンセプトとする長崎歴史文化博物館を訪問し、同博物館の民間指定管理者である(株)乃村工藝社から、施設の管理運営の現状や指定管理者制度の課題について、現地調査を行いました。
 (株)乃村工藝社は、平成17年4月から22年3月までの5年間、指定管理者となっていますが、指定期間に関しては、当初から議論があり、施設によっては3年では事業実施計画を推進することが難しいとの意見や、9年という案も出たものの、それでは長すぎるとの意見が出されたために5年となったようですが、再公募に当たっては、5年から6年への期間延長が決定したと伺っています。
 このような文教施設、文化施設などの指定管理者になった民間業者は試行錯誤しながら運営に臨み、集客、増収等に大変な努力をしています。しかし、企画から実施、開催時期など時間を掛けて検討し、長期的な視点で計画を実施しているために、1度や2度のイベント等の開催ではなかなか結果を出せないうえに、評価もしにくいのが現状です。
 指定管理者の公募については、できるだけ多くの応募が望まれ、より良い運営に取り組むことが可能な民間事業者の指定を目指していると思われますが、指定管理者となるためには、実績の積み上げはもちろん、現状維持にとどまらないより質の高い管理運営能力が求められており、当然、可もなく不可もなくではなかなか指定されるのは困難な状況です。
また、赤字経営で事業者が辞めたい時でも直ぐに代わりが見つからず、辞めることができないという現実もあると思われます。
 今回の長崎県の調査では、民間の指定管理者から、「目先の利益を優先するのではなく確実な企画とたゆまぬ努力を続け、当初の赤字体質から利益体質に転換する」と力強い言葉を聞きました。
 一方、本県では、指定管理者制度導入以来、順次、公募の実施によって段階的に対象施設を拡大してきましたが、例えば、明石西公園の指定管理者には、平成17年度の第1回目の公募では民間事業者が選定され、民間活力が導入されることになりました。しかし、平成20年度に行われた第2回目の公募においては、県の外郭団体である(財)兵庫県園芸・公園協会が選定され、その民間事業者も、再公募に意欲を持って臨み最終審査まで残ったと聞いていますが、結局、選定されませんでした。
 民間事業者と園芸・公園協会の指定管理者としての実績がどう評価されたのか、詳細はわかりませんが、公表されたデータを見る限り、園芸・公園協会は、運営経費削減に対する取り組みが他の応募者より優れていたことが選定された主な理由と推察されます。県と密接な関係のある外郭団体が取り組むとしても、効率的、効果的に運営していただくことを望みます。
 本県では、特定の者を指定する施設が、現在48施設あり、また「指定管理者の公募に関するガイドライン」によって、指定期間を原則3年としていますが、平成21年に総務省が公表した調査でも比較的長期の指定期間を設定している事例も少なくありません。
 そこで、指定管理者制度の趣旨を踏まえた公募実施施設のさらなる拡大とともに、長期の期間指定が可能となるような施設の性格や種別に応じた指定期間の弾力的な設定など、指定管理者制度の考え方について、当局の所見を伺います。。

3 県立山の学校の運営について

 県立山の学校の平成12年度から21年度までの10年間について、入学者数の推移を見てみますと、年度によって多少のバラツキはあるものの、いずれの年度も定員の20名を満たしておりません。
 このような現状に鑑みれば、山の学校の運営が今のままでいいのか、何らかの見直しを行わなければならないのではないかと感じます。
 山の学校は、義務教育修了以上の15歳から20歳までの男子で県内在住者を対象としており、共同生活の体験を通じ、生き方や進路に悩む若者の自立を助ける活動を行っていますが、「自分の生き方を見つけたい」というニーズや、学校生活になじめなかったり、あるいは不登校といった将来に不安を抱える若者は潜在的に多いのではないかと思われます。
 そのことを裏付けるように、本県では、平成20年度の不登校児童生徒は、小中学校合わせて約5,200人で、千人当たりで10.7人となり、全国平均をやや下回ってはいるものの、ほぼ横ばい状態にあり、依然として不登校・引き込もり現象は深刻な状態にありますが、このような多くの不登校や引き込もりの児童生徒たちの義務教育終了後の受け皿として、山の学校は非常に重要な存在だと考えます。
 最近の青少年の動向や社会のニーズを的確に把握し、山の学校の環境を十分に生かし、幅広い活動ができればと考えます。
 例えば、自然豊かな環境を十二分に生かし、山の学校を中核施設として、青少年の育成に取り組んでいる民間団体やNPO、さらに、各種学校などの教育関係施設との幅広い連携を行い、これらの施設を活用したり、カリキュラムの工夫を行って交流を広げていくといったことも考えられます。
 そこで、青少年の健全育成はもとより新たな社会ニーズに的確に対応し、山の学校が一層幅広い活動ができる施設として、その機能を十分に活かす施策展開が必要だと考えますが、山の学校の運営に今後どのように取り組まれるのか、所見をお伺いいたします。

4 農業への新規参入について

 景気低迷のおり、企業倒産が多発しています。今や大手と言えども安心することはできませんが、特に建設業、流通業界などは生き残りとも言える状況下で、農業に転換しようとする企業をはじめ、定年退職して農業に従事したいという人も増えていると聞いています。
 県では、「ひょうご就農支援センター」をはじめ、兵庫楽農生活センターにおける就農コース等の実施、兵庫みどり公社の農業後継者育成事業など、農業への新規参入を促進するため、努力をしておられることは十分理解をしていますが、若手で農業に参入しようとされる方は後継者を除き、農地確保や栽培技術の習得などはなかなかハードルが高いうえ、生計を立てるには収入が不安定なことなどにより、二の足を踏んでいるのではないでしょうか。
 農業へ新規参入するにはさまざまなパターンがあると思われますが、私が体験したケースでは、事前研修が数日あり、実際の農業実習として月のうち15日間農業に従事し、それを1年間通して実習して、農家に証明していただくというものでした。
 支援制度としてはいろいろなメニューが用意されていますが、土地を確保し、機械を購入するだけでも大変な費用であり、相当な自己資金がなくては難しいというのが現実です。
 また、定年退職後の農業参入者については、農業を業とする方だけではなく、健康のためとか、生き甲斐づくりとして取り組む方も多いことが伺え、こうした方々とのすみ分けをしていかなければなりません。
 しかし、本気で参入しようとしても、技術や経営ノウハウについては自然を相手にするだけに、その都度、土壌や気象条件などが違うわけで、多くの経験を積んだアドバイザーが必要となります。
 先日、兵庫県農業賞を受賞された、佐野さんの祝賀会に出席しました。同席された伍々農政環境部長が、この賞は長年農業に従事して功績を挙げ、かつ地域の農業の発展に寄与された方に送られる賞であると挨拶しておられましたが、まさにそのとおりだと感慨深いものがありました。また、佐野さんご自身は謝辞の中で、自分は農業一筋に取り組み、いつも土と対話していると話を続けられました。地元の方々の厚い信頼のもと、常に中心的な役割を果たしてこられました。ご本人は至って元気ですが、既に80歳を迎えておられます。こうした方々のノウハウをしっかり受け継ぐことが必要です。残された時間はそう多くありません。
 私は、農業への新規参入を促すためには、経費面の問題もありますが、経験に裏打ちされた農業従事者の技術や経営ノウハウをしっかり引き継いでいくことが何よりも重要だと考えます。
 そこで、農家の高齢化と後継者不足の中、県では、農業への新規参入の現状を踏まえ、今後の新規参入者への支援と確保とともに、農業従事者のノウハウの継承についてどのように考えておられるのか、所見をお伺いいたします。

5 ヤード対策について

 「周囲を鉄壁などで囲まれ、犯罪組織が海外へ不正輸出等を目的として、窃取した自動車・オートバイの解体、コンテナ詰めなどの作業を行う作業場」をヤードと呼んでいます。ヤードは、盗難車の解体や不正輸出の舞台となったり、外国人の不法滞在や不法就労、薬物の隠匿場所として利用されるなど犯罪の温床となっています。
 ヤードは、山間部や田園地帯に存在し敷地の周囲を鉄壁やコンテナで囲んで内部を見えにくくしている閉鎖的な構造であることから内情が分かりにくい実態があり、私の住む神戸市西区や隣の三木市を中心に、県下80数箇所でその存在が確認されていると聞いています。
 県警では、平成21年中に16箇所のヤードに対して捜索を行い、自動車の窃盗10名、入管法違反7名、薬物事犯7名などの犯罪を検挙し、一定の成果を挙げており、西区においても、14箇所のヤードが確認されていた時期もありましたが、県警で捜査を重ねた結果、現在は9箇所に減少しています。
 過去にも集団での窃盗犯の検挙も行われておりますが、車を盗んだ者、運搬する者、それを解体する者など、それぞれ役割が違うために犯人の特定や立証が難しいという側面があると思われます。
 また、ヤードの多くはナイジェリアやパキスタンなど、アフリカ・中近東系の外国人が経営している実態があり、そこで働く労働者をはじめ多くの外国人が出入りしており、県警が昨年11月に西区でワゴン車の解体作業場となっているヤードを捜索した際にも、近隣住民の「10年前から、外国人の出入りが目立つようになった。」という証言が報道されています。
 この11月の捜索では、西区を含め県内10箇所の捜索が行われ、ナイジェリア人ら2人が入管難民法違反容疑で逮捕されましたが、三木市内のヤードでは、市街化調整区域であるにもかかわらず、無許可で工場や鉄壁を建設していたことが判明しています。
 県警では、この捜索の翌日、「兵庫県警察ヤード対策本部」を設置し、実態把握や立入りの強化などを図ることとしていますが、県警のみならず関係機関との連携を密に行うことにより、迅速かつ的確な対策を推進し、外国人の不法就労をはじめヤードの実態解明を進め犯罪の温床にならないよう、さらなる対策の強化が求められていますが、本部長の所見をお伺いいたします。

6 警察官の技能向上について

 警察官の皆さんは、日ごろから自らの身体と必要な技能の習得、鍛錬に取り組んでおられます。どの部署にとっても危機管理は重要ですが、私自身の経験として言わせていただければ、とりわけ「白バイ隊」に関しては、2輪車であるがゆえにバランスをとりながらの操作であり、機敏に動ける利点もありますが、防御は自らの技術によるところが大きく、如何に危険な状況の中で活動していかなければならないかは、ご承知のとおりです。
 現在、兵庫県警には、約150台の白バイと約180名の白バイ隊員が配置されていますが、特に2輪を扱い、その操作技術のレベルUPに取り組むには「心技体」のバランスを図りながら技術を研ぎ澄まし、ミスを無くしていくことによって安全のマージンが増えるわけで、如何に日ごろからの訓練が大切か伺われます。
 全国の白バイ隊員がその技術を競う大会として、白バイ全国大会が行われていますが、兵庫県警の過去の結果を見てみますと、個人総合優勝が1回、個人種目別優勝6回、平成8年に発足した女性白バイ隊「ホワイトウェーブ」も、2度優勝しており、直近では昨年の第41回大会の優勝が記憶に新しいところです。その他にも各種目・部門で2位、3位などの上位入賞を多数記録しています。
 このように本県の白バイ隊員は、全国レベルの大会で優秀な成績を残しているにもかかわらず、必ずしも県民にそのことが十分周知されていないのではないかと思われ、隊員の士気高揚のためにも、もっと積極的なPRをしていくことが必要ではないでしょうか。
 また、県下においては、白バイ専用の訓練場所が限られており、技術レベルに対応したコース設定が可能であったり、路面環境の変化に対応可能なコースを設けるなど、訓練場所の一層の充実が求められているのではないかと考えます。
 県財政が厳しい中ではありますが、例えば、県民が利用する交通安全施設に併設した訓練場所ができないものか、既存の訓練場所に加え、県有地を活用した訓練場所がさらに確保できないものかと考えます。また、白バイ隊員の訓練を多くの県民に観ていただいて、技術を切磋琢磨している様子や、訓練の厳しさなど、その活動を広く広報する見せる訓練も今後は、必要ではないでしょうか。
 そこで、県警における白バイ隊の活動や訓練の広報、さらに訓練場所の確保についてどのように考えておられるのか、本部長の考え方をお伺いいたします。

7 警察施設の充実について

 神戸市内のニュータウンに立地する神戸西警察署は、私の住む西区を管轄区域としており、管内では、今なお人口の増加が見込まれています。
 神戸西警察署が建設された平成3年当時、署員の定員は146名でしたが、管内人口の増加等により、現在、定員は314名に膨れ上がっています。このため、これまで庁舎の増改築を繰り返しながら現在に至っていますが、県民から見ますと、署員は狭隘な庁舎の中で仕事をしており、時には来庁者に対して廊下で応対したり、駐車場は満車状態が続き、場合によっては付近の有料駐車場を利用せざるを得ないこともあります。
 例えば、県全体の交通事故件数は減少傾向にありますが、神戸西警察署管内は、人口が増加していることに加え、面積が広大であることから、自動車を利用する住民が多い地域であり、交通事故件数は増加しています。人口の増加傾向に加え、交通事故の例を見ても、今後、まだまだ神戸西警察署は人員増の可能性があるのではないかと思われます。県民にとって身近な存在である駐在所をはじめ、さまざまな面から警察機能の充実を図っていく必要性は十分理解していますが、現状のままで神戸西警察署にこれ以上の人員配置をすれば、職場環境が一層劣悪になります。
 庁舎の現状は、執務室の机の配置を見ても、せいぜい人1人が通るのがやっとで、仮に署員が増員されたとしても机を置くスペースもないほど狭く、平成8年と17年に増築していますが、現在ではそれでも不足気味になっていると聞いています。
 とりわけ、来庁者用の駐車場不足は慢性化しており、業務に使用する車両の駐車場も満車状態で、緊急時の対応のために車両入れ替えが日常的に行われています。
このような状態で、警察活動に支障がないのか、警察官の士気高揚に影響が出ないのかと懸念を感じます。
 庁舎建築後約18年が経ちますが、耐用年数までまだ22年余りを残しており、新たな建て替えはできないかと思われますが、このままでは執務そのものに影響を及ぼしかねません。現在の庁舎を生かしながら敷地内での有効な改築等を考えなければなりませんが、県民の利便性からも、手狭となっている駐車場の確保は必須です。隣接地の公園(神戸市)を利用できないのか、幅広い視野での検討が望まれます。
 今後は、施設の増改築も含め、さらなる用地の確保も視野に入れ、地域の安全・安心の確保に向けた神戸西警察署機能の充実が必要と考えますが、本部長の所見をお伺いいたします。

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