岡やすえ議員が質問(予算審査・産業労働部)を実施

第308回2月定例会 予算特別委員会質問(産業労働部)
2011年3月4日(金)

1 緊急雇用対策事業について

(1) 事業の推進状況について

 社会の安定には雇用の安定が欠かせません。
 世界同時不況以降、雇用が3年間以上にわたって先行き不透明な状況が続いていることが、社会全体にとって大きな不安定要因となっています。
 社会現象として「無縁社会」という言葉が生まれ、孤立化する人々の不安を特集した2月11日のNHK番組でも、孤独・不安・将来への希望が持てない要因の多くを雇用不安が占めていました。
 このような背景から国では、雇用創出効果の高い施策への重点化等により、引き続き、失業率をできるだけ早期に3%台まで低下させるとともに就業率の向上を目指しており、雇用を「つなぐ」、「創る」、「守る」の3本柱による政策の展開を進めることとしています。
 自治体に対する交付金を原資とする基金を活用した緊急的・重点的な雇用創出の取り組みも、その「雇用を創る」取り組みの大きな柱の一つで、本県においても、平成20年度以降、総額約175億円に及ぶ「緊急雇用就業機会創出事業」及び「ふるさと雇用再生事業」に取り組み、地域の実情に応じた雇用機会を創出する事業を市町村とともに実施してきましたが、本年11月末までで約19,000人の雇用が生み出されるなど、一定の役割を果たしてきたといえます。
 そこで、これまで実施してきた事業に伴う雇用創出数の目標に対する達成状況等の実績と再就職の状況、またこの事業に関する課題は何かについて所見を伺います。

(2) 総合政策室長との連携について

 この件に関しては、企画県民部に対する質問の中でも申し上げたわけですが、緊急雇用事業に象徴される部局横断的な事業については、県全体として抱える課題の解決に向けた取り組みも欠かせないと考えています。
 すなわち、知事に対する「当初予算申し入れ」の中で私どもの会派が申し述べておりましたように、産業・雇用政策は勿論、医療・福祉や教育の充実、農業再生や環境対策、防災・危機管理といった多様な行政需要を県政に反映するとともに、経済・雇用の面では、介護・福祉施策、農林水産、グリーンエネルギーの開発といった政策分野を、雇用確保と結び付けて活性化させるといった視点が欠かせないと思います。
 こうした観点で、改めて緊急雇用就業機会創出事業をみると、総計480を越える事業が、めざすべき県政のビジョンや理念に照らして、どういった視点を持って創出されたものなのかがわかりにくく思われます。
 例えば、県は1月28日に、緊急雇用対策として、高校・大学卒業生などを対象に、100人を1年間の雇用期間で嘱託職員として県庁等で採用すると発表し、「県での就業経験を正規雇用につなげてほしい」としていますが、こうした取り組みも含め、県政全体をトータルとして見渡し、各事業計画部局に方向性を示していくという総合政策的視点が充分介在しているのかが見えにくく、疑問に思っています。
 緊急雇用創出事業は、平成22年度までで事業数で累計487を見込んでおり、雇用人数も約11,000千人に及んでいることから、雇用対策それ自体では、一定の成果に繋がってきたという評価も可能ですが、せっかくの基金であり、県政の目指すビジョンや重点施策の実現につなげる観点から、総合政策室と協議しながら事業を構築していくことも必要ではないかと考えています。
 そこで、今回の緊急雇用就業機会創出事業のとりまとめにあたり、全庁的な視点で総合政策室長とどのような連携が図られたのかについて伺います。

(3) 正規雇用の創出に向けた取り組みについて

 緊急雇用就業機会創出事業やふるさと雇用再生事業は、事業のフレーム上、雇用期間が1年又は3年以内に限られていることから、これまでの取り組みが一過性に終わらないよう、さらなる対策をと工夫をしていく努力が欠かせません。
 正規雇用創出に向けた取り組みの第一線となる産業労働部として、今回その観点でこれらの事業を眺めたときに、これらの事業がどの程度個人のスキルアップや正規就業に向けたインセンティブにつながる内容となっているか、そしてそれらの積み重ねの結果、どれほど正規雇用創出に貢献できる事業内容であるのかという視点が不可欠です。
 これらの事業は、短期間雇用となっているため、期間中から期間終了後の長期的雇用に結びつけるための就職活動を行わなければならない、補助的業務がほとんどであり、企業によっては就業経験として認めてくれないことがある。基金終了後は当該企業等での正社員化を誘導することとはなっていないことから、正規雇用への道筋が不透明になってしまうのです。
 経済が回復してきつつあるといわれるこのような時こそ、より働きがいと結びついた正規雇用をどう増やしていくのかが必要です。
 緊急雇用就業機会創出事業は、確かに発端としては臨時的な雇用に過ぎない面からはじまりましたが、事業設定における工夫や臨時的雇用実施後のフォローアップの方法如何によっては、正規雇用により多くを結びつけるしかけづくりも可能と思います。
 そうした正規雇用確保に向けて、どのような取り組みが有効で、それをどう具体的に展開していくのかを伺います。

2 重点分野雇用創造事業の推進について

 平成21年2月からはじまった雇用創出をめざした基金事業は、国においても年々拡充され、これまで計7回・1兆円を超える予算措置がなされてきました。
 こうした中、新政権のもと、平成21年度の第2次補正予算で創設されたのが、重点分野雇用創造事業です。
 これは、雇用失業情勢が厳しい中で、介護、医療、農林、環境等成長分野として期待されている分野における新たな雇用機会を創出、地域ニーズに応じた人材を育成し雇用に結びつけるための事業を実施するもので、設立後2度の拡充措置が図られてきました。
 県の平成23年度予算でも、新政権のもとで創設された重点分野雇用創造事業が昨年に続いて提案されています。
 重点分野として、介護、医療、観光、農林水産、環境・エネルギー、地域社会雇用などの11分野が示され、県事業で約44億円・135事業と、市町への事業費補助約30億円をあわせて合計約74億円が計上され、5,283人の雇用創出が見込まれています。
 これらのうち、例えば、少子高齢化に伴う、要介護者の増加などに対応すべく、特に力を入れるべきと考えられる介護・医療分野に関しては、事業数は18で見込まれる雇用数は660人とされていますが、将来にわたって、福祉・介護ニーズに対応できる質の高い福祉人材を安定的に確保するための取り組みとして制定されている、「福祉人材確保対策推進プログラム」における平成23年度までの目標数値23,000人の達成に向けた一助になり得るのかが心配です。
 そこで、この重点分野雇用創造事業について、特にどういった方針やビジョンを持って事業を構築しようと考えているのか、また既存の「福祉人材確保対策推進プログラム」における目標とどのように関連づけて実施されようとしているのかを伺います。

3 ものづくり大学校の運営について

 ものづくり大学校は、教育研修施設と体験施設から成り立っていますが、教育研修施設の4月開設に先立ってお伺いします。

(1) 教育研修施設について

 同施設に設定される5科11コースは、姫路高等技術専門学院の継承を含めて、「ものづくりの基盤技術分野を支える新たなものづくり人材の育成」と位置づけられています。
 しかしながら、現存する姫路高等技術専門学院の入校率は、平成21年度の84.5%から平成22年度の80.5%へと低下してきております。
 大学全入時代が到来し、学校教育においても職業教育の強化も進められるなかで、4月時点でどの程度の入校が期待できるのかが心配されます。
 一方就職率に関しても、平成21年度実績で68.8%と、他の職業訓練校である神戸高等技術専門学院の72.6%や但馬技術大学校の88.1%と比較しても低迷した状況にあります。
 企業の即戦力志向の高まりによる「雇用のミスマッチ」やフリーターなど不安定な就業を続ける若者や非正規雇用者の増加による格差拡大が社会問題化している状況の是正機能と位置づけられる職業能力開発施設がこの就職率では、不安といわざるを得ません。
 そこで、姫路高等技術専門学院の継承にあたる教育研修施設について、このような課題をどのように改善していこうとされるのかを伺います。

(2) 体験施設について

 体験施設の機能は、中学生にものづくり産業への関心を高めるのが目的ですが、この施設の意義を考えるときに、どうしても考えざるを得ないのが、昨年3月をもって閉館となった「私のしごと館」との比較です。
 ご承知のように「私のしごと館」も、若者を対象に職業体験の機会、職業情報、職業相談等を提供する施設としてオープンし、中学生や高校生などの時から、仕事というものに親しみを持つことができるよう、また、いろいろな職業を体験することができるように、それら各種仕事の展示体験コーナーや、職業情報の提供、発信等を実施していたものです。
 この施設の財源は入場料等の自己収入約1億円と、雇用保険料による運営交付金約15億円でまかなわれておりましたが、職業能力開発施策という観点から、オープン当時は収支均衡を考えず、また収支に関する目標の設定もなく、採算を度外視した運営が行われていたといわれておりました。
 その後、駐車場有料化や企業広告の開始、法人会員制度導入、体験プログラムの充実や体験料金値上げ等の対策を講じましたが、2008年の民間委託を経て閉館に至ったわけです。
 総額約580億円を投じて建設、毎年20億円程度の赤字を発生させた「私のしごと館」と、体験館の単純比較はできませんが、このような実例を鑑みた場合、体験館については特に、開設後の効率的な運営や体験機会提供がもたらす効果等を充分検証しながら、運営を進めていく必要があると考えますが、現時点の見通しと課題について伺います。

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