吉本誠議員が質問(予算審査・産業労働部)を実施

第308回2月定例会 予算特別委員会質問(産業労働部)
2011年3月4日(金)

1 制度融資について

(1) 損失補償額について

 産業労働部の23年度当初予算は、約5,000億円でありますが、そのうち9割以上の約4,600億円が中小企業等への融資となっており、産業労働部の事業の根幹を成しているといえます。
 ご承知の通り、県の中小企業融資制度は、金融機関及び県信用保証協会の協力を得て、県内の中小企業者等が県内において必要とする資金を円滑に供給する目的で実施されているものですが、融資実績ベースでみてみれば、19年度は2,774億円、20年度は4,847億円、21年度は4,738億円、22年度見込みは、3,700億円となっており、金額の多さもさることながら、各年における実績の変動も大変激しいものとなっています。
 近年、融資の中で最も大きな比率を占めているのは、経営円滑化貸付です。経営円滑化貸付は、利率が1.15%と最も低く、最近3ヶ月間の売上又は利益率が前年同期比に比べて3%以上減少している者等を融資対象としており、過去3年間でみれば、制度融資全体の6割以上が経営円滑化貸付となっております。これに借換資金、長期資金・短期資金が加わると全体の9割以上に達します。
 制度の趣旨にもありますように、県の行う制度融資は、大企業に比べ担保力・信用力が弱く金融機関からの融資を受けにくい中小企業者に対する金融の円滑化を図るためのものですから、融資実績のスキーム別でみても、緊急時の資金需要に応え、何とか事業を継続していこうとする中小企業に対して運転資金等を提供しているわけです。
 そうであるならば、やはり貸倒のリスクというものについてどうなっているのか気になるわけです。県の制度融資は、当然のことながら、金融機関がその事務を担っています。仮に、企業が返済不能となれば、まず、金融機関は担保等による回収を行います。そして、回収不能額に対し、保証協会から金融機関に代位弁済が行われます。信用保証協会では、金融機関から融資を受けた中小企業が借入金を返済できなかったことにより代位弁済を実行した際に、その代位弁済額の一部(70%~80%)を補填するため、日本政策金融公庫と信用保険契約を締結しており、保険金の支払いを受けることになります。そして、県は、代位弁済額に保険金等を補填した残りの信用保証協会負担分(20%~30%)の一部分(30%~90%)を損失補償するという仕組みになっており、県が、22年度に損失補償した額は、約22億円となっております。
 そこで質問ですが、県の制度融資において、一定必ず生じる損失補償に関し、22年度は約22億円発生しているが、この金額について、当局としてどのように捉えているのか、ご所見をお伺いします。

(2) 事業展開融資について

 先ほど述べましたように、県の制度融資は、その政策から9割以上が運転資金的な性格の融資となっているわけですが、スキームとしては、事業展開融資として、いわゆる前向き資金も用意されています。この中でも、新分野進出資金は、①融資を受けた後、おおむね2年以内に売上の増加が見込まれる者等に対して行う事業応援貸付、②現在の事業と異なる新しい分野に進出する者に対して行う第二創業貸付、③県の「経営革新計画」の認定を受けた者に対して行う経営革新貸付、④新技術創造に向けた設備投資等を行う者等に対して行う新技術・新事業創造貸付、等があり、このような貸付が増えてくれば本県経済にも明るさが見えてくるのではと思うところです。
 しかし、近年の厳しい経済状況を反映して、残念ながら融資実績は急激に減少しており、19年度は122億円であったものが、20年度は73億円、21年度は31億円、22年度は22億円となっております。このように実績ベースでは年々下落傾向にあるわけですが、23年度予算においては、22年度の150億円から50億円積み増し、200億円の枠を用意するなど、引き続き大きな枠を設定しています。また、事業展開融資全体においても、融資実績は大きく下落していますが、設備投資資金500億円をはじめ、立地資金110億円等大変大きな枠を引き続き設定しております。
 そこで質問ですが、前向き資金の需要が年々下落傾向にある中で、来年度は更に積み増しを行い、事業展開融資全体では875億円という大変大きな枠を設定している意味について、ご所見をお伺いします。

2 ひょうご海外需要開拓プロジェクトの推進について

 人口減少社会において経済規模を維持していくためには、内需、外需双方の拡大に資する産業振興策が必要になると思われます。内需の拡大には、産業構造を転換し生産性の高い分野に資金を投入するという選択と集中を図ることや、長期的には少子化対策をしっかりと行っていくことなのでしょうが、短期的にはツーリズム等を初めとする交流人口の増加が必要となってきます。
 また、外需の拡大には、成長するアジア新興市場を主なターゲットとしてさらなる製品開発や販路の拡大が求められます。言うまでもなく、内需、外需の双方から我が国経済に大きな影響を与えるのはアジア市場、特に東アジア市場です。企業みずからがアジア市場においてビジネスチャンスを探すことはもとより、県としても、これまでの友好省州などとの交流から得た人脈や知見から積極的な支援を行っていくべきではないかと考えます。そのような意味からも、我が会派としては、従来より、アジア地域における海外事務所の復活について何度も取り上げてきたところです。
 このような中、産業労働部の平成23年度予算においては、ひょうご海外需要開拓プロジェクトの推進として、県下中小企業等の海外需要開拓に係る課題解決を支援するため、現地進出済みの兵庫県関係ビジネスマンを活用し、海外ビジネスに係る各種情報提供、及び取引先・提携先企業の紹介等を行う、また、県下中小企業等が海外市場を調査し、需要開拓する契機を設けるため、経済成長著しい新興国へのビジネスミッションを派遣する、ことになっております。
 具体的には、国際ビジネスデスクを、中国の広東省の広州、遼寧省の大連、ヴィトナムのホーチミンに設置し、海外ビジネス情報提供、取引先・提携先企業等に係る情報提供及び紹介、また、23年度秋から冬頃にアジア、中東等に新興国ビジネスミッションを派遣することを予定しています。
 まさに時宜を得た施策であると思いますが、予算額を見てみると、307万3千円となっており、これでは、先ほど述べたような、事業目的を達成するには正直心許ないと言わざるを得ません。
 私は、先日、埼玉県に行き、埼玉県が昨年11月に設置した「埼玉県上海ビジネスサポートセンター」について調査してきました。これは、埼玉県内の企業と現地日系企業を含む中国企業との取引が円滑に進むようビジネス面での支援を行い、中国市場への参入を促進するために設置されたものです。このセンターは、中国取引専門のコンサルティング会社へ業務委託し、委託先の中国取引に関する専門的なノウハウや現地企業、政府機関等とのネットワークを活用するとのことで、現地スタッフとして、日本人の日本商社OB1人とアシスタント2名(内1人は日本人)を当センターの業務のためだけに貼り付けています。業務委託料は、オフィスの賃料や現地スタッフの人件費等込みで年間2500万円となっており、企画コンペによってこの業者を選択したとのことです。
 昨年の11月に設置されたばかりですので実績はこれからでしょうが、県内窓口となっている、埼玉県中小企業振興公社内にある埼玉国際ビジネスサポートセンターでは、オープンからの2か月間で、相談件数69件あり、現地では、訪問企業数15件、ビジネスマッチング6件、取引成約1件とのことでした。本県のひょうご海外需要開拓プロジェクトの推進とは予算規模が違うので単純に比較することはできませんが、県が掲げる目的を達するのであれば、埼玉県の取り組みは大変参考になるのではないかと思います。
 そこで質問ですが、ひょうご海外需要開拓プロジェクトの推進について、新規事業として取り組まれるにあたり、限られた予算の中でどのように具体的成果を出していこうとしているのか、ご所見をお伺いします。

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