中田香子議員が質問(予算審査・総括)を実施

第304回2月定例会 予算特別委員会質問 (総括審査)
2010年3月15日(月)

1 今後の財政運営について

 新年度予算案については、私たちの会派が政策提言で求めた教育、福祉、医療など、県民生活に直結する施策を相当に取り入れていただいており、厳しい財政状況の中でも、県民の負託に応えるべく、全分野に亘ってきめ細かな対応がされている、バランスの取れた予算であると評価します。しかし、全国ワースト2位という財政危機から一刻も早く脱出するためには、財政運営に、より一層の緊張感を持って望む必要があると考えます。特に来年度は、新行革プランがスタートして3年目の年、総点検を実施することになっていますので、この点検においては新行革プランの初志をしっかりと確認していただきたいと思います。
 これからの新行革プランの進め方については、代表質問で藤井幹事長が申し上げたとおりですが、とりわけ、財政運営については、県債残高の縮減を着実に進めていくことが求められます。私たちの会派の竹内議員も一般質問で指摘しましたが、県債の償還金が利息分だけで年額800億円という財政運営は、財政の硬直化を招き、新たな課題に対応できないだけでなく、結果的にコストの高い行政サービスを提供することになるという点でも問題があると思います。
 そこで、施策の優先順位をしっかりと定め、選択と集中の中で、より効率的、効果的な事業の展開を図る必要があります。
 社会経済情勢が目まぐるしく動く中、次々と生まれる新たな課題への対応が求められ、また昨年の台風被害のように、ひとたび自然災害が発生すれば、それへの対応も避けられません。投資事業をはじめ、様々な事業の実施について、国の補助金や交付税措置のある起債によって財源が措置できれば、県の財政としては有利であることは理解しますが、だからといって、そのまま歳出を増やしてよいということにはならないと思います。
 知事としては、県民の福祉向上のために、県民の期待に応えたいと考えるのが当然だと思いますし、井戸知事のこれまでの取り組みに対しましては敬意を表します。しかし、財政状況に関する審査において、私たちの会派の石井委員も発言したとおり、次世代に過大な負担をかけないという観点からしますと、やはり財政運営の適正化が急がれます。そのために、財政指標の改善を十分に意識して、そして県民への説明責任を果たし、しっかりと債務縮減に取り組まれることを期待しますが、改めて、今後の財政運営の方針について、ご所見を伺います。

2  出資法人の経営改善について

 新行革プラン推進における重要な課題の一つが公社等出資法人の経営改善であります。
 自治体財政の健全度を示す指標の一つである「将来負担比率」について、本県は全国ワースト1位ですが、この指標の算定においては、出資法人等に対する損失補償債務等の負担見込額を考慮することになっています。平成20年度決算では、県の負担見込額として、みどり公社の債務分で346億円、土地開発公社の債務分で204億円、道路公社の債務分で159億円、住宅供給公社の債務分で28億円となっています。債務の内容はそれぞれ違いますが、いずれも県財政へ大きな影響を与えていることは事実であります。
 そこで、これら公社の財務の健全化が求められますが、まずは保有資産など、正確な財務内容の把握が必要です。その上で、実現の可能性が十分に高く、また行革期間中にその取り組みの検証が可能であり、そして県民に分かりやすく理解が得られる、そのような経営改善計画を立てることが重要です。
 みどり公社の造林事業に融資することも、土地開発公社の先行取得用地や自主事業用地を環境林として買い取ることも、公費でもって公社の債務を縮減しようとするものですが、どうして当初の計画どおりに事業が進まなかったのか、その要因を検証し、明らかにしなければなりません。そうでなければ、県民の理解を得ることは難しいですし、同じ失敗を繰り返すことにもつながります。公社等経営評価委員会も、例えばみどり公社について、「県が多額の貸し付けを行う必要性について、県民に十分周知を図ること。」と指摘していますが、なぜそうなったのかの説明なしに、公費投入の必要性を理解せよというのには無理があります。私たちの会派の池畑委員の質問に対して、「造林事業の問題は国全体の問題であり、国からの支援は当然」というような答弁もありましたが、国に責任があるというのであれば、県費を投入するのはおかしいのではないでしょうか。
 来年度、新行革プランの総点検を実施するわけですが、公社について、特に財務健全化のために公費を投入するものについては、この点を十分に考慮して点検すべきであると考えますが、当局のご所見を伺います。

3 新規学卒者の就職支援について

(1) 就職未内定者への支援策について

 金融危機後の景気低迷を背景に、学生の就職活動は厳しい状況が続いています。企業の採用意欲は依然弱いままで、学生の就職環境には明るい兆しが見えません。今春卒業予定の大学生の就職内定率は先月1日時点で80%と調査開始以来最低となり、高校生も1月末時点で81%にとどまっています。
 現在のこの状況は、バブル崩壊以降の景気悪化により生じた「就職氷河期」の再来とも言われています。池畑委員も教育委員会への質問において、専門高校の生徒に対しては教育委員会と知事部局が一体となって就職支援を行うべきと発言しましたが、ここで適切な対策を講じなければ、再び多くのフリーターを生むことになります。
 厚生労働省では今月下旬から、就職できなかった新卒者向けの職業訓練事業を新たに始めるとのことです。社会人の心構えや就職に必要な基礎力などについて無料で学べる、さらに訓練期間中の生活費に対しても補助する、といった内容のようですが、県においても、こうした新卒者の窮状を少しでも打開するための効果的な取り組みを期待するところです。
 そこで、まず喫緊の課題としまして、今3月の丁度半ばで、もうすぐ新年度が始まるわけですが、現時点において就職が内定していない今年卒業の高校生・大学生等に対し、県として就職斡旋や能力開発など、何らかの支援を行おうと考えているのか、ご所見を伺いします。

(2) キャリア教育の取り組みについて

 また、中期的な課題ですが、若者が自らの個性や適性を理解し、主体的に進路を選択する能力や態度を育てるために、学校段階からの職業意識の形成が大切であります。このため、各段階においてのキャリア教育の取り組みが重要です。
 「介護」や「農林」等の分野、また家庭的保育事業など地域社会で活動する社会的企業がこれからの雇用の場として期待されていますが、このキャリア教育の中で、このような分野での体験活動をより充実させることも必要であると思います。そのために、教育委員会と各部局との連携も図っていただきたいと考えます。
 そこで、キャリア教育の取り組みについてはどのようにお考えなのか、お伺いします。

4 児童虐待の防止について

 県では、児童虐待事件の増加を受けて、こども家庭センターの機能強化、体制強化を図ってきました。また市町においても同様に相談体制等を充実し、虐待を早期に発見することが可能になってきました。近年の相談件数等の増加は、相談体制が充実したことによる分も少なからずあると思います。
 そのような意味では、体制の整備は一定進んだと言えますが、そこで事案の早期発見とともに、一時保護、あるいは強制的な職権保護による親子分離がなされた後、その親子が虐待の危険性を回避し、親子関係が改善され、再び一緒に暮らすことができるようにフォローアップすることが重要であると考えます。
 この度の三田市での事案についても、一時保護から家庭復帰を許可した後の事件でありました。家庭復帰を許可するか否かの見極めは重要でありますが、それとともに家族再統合へ向けてのフォローアップも求められます。
 親の虐待が明らかな場合、児童相談所の対応としては、親と子を分離し、子どもを一時保護した上で、その後の状況に応じて児童養護施設への入所などの措置を行っています。しかし、こうしたケースにあっても、最終的な目標としては、再び家族が一緒に生活できる道筋をつけることとされています。いわゆる家族再統合の取り組みであります。
 そのための方策として、まずは地域での情報収集策を構築していくことが必要であります。健康福祉部への岡委員の質問に対して、「地域において、児童委員による施設退所後の児童に対する確実な見守り体制の強化や、地域団体等によるSOSキャッチ活動の一層の推進に取り組む」と答弁がありましたが、着実に進めていただきたいと思います。そして、それに加えて保護者への働きかけにも重点を置いていただきたいと思います。
 虐待事案の中には、保護者自身がかつて自分の親から虐待されていたケースも多いといわれており、親子再統合のためには保護者のケアが不可欠です。家庭環境の改善や復帰に向けた相談や、精神科医による保護者へのカウンセリングや子どもへの接し方のトレーニングなど、丁寧なケアが必要です。例えば、その保護者の気持ちや考えを聞き出すためには、十分な時間をかけたカウンセリングが必要です。短時間では本当の気持ちを聞き出すことは不可能です。
私は、県として、保護者に対する効果的なケアを行うためのプログラムや仕組みを構築することは、こうした課題を解決する上で大変重要であると認識しています。
 現在、法務省では児童虐待事案において親権を一時的に停止する新たな法制度も検討されていますが、場合によっては子どもを親へ返さないということも選択肢の一つであることを再認識し、親子が再統合した後に、再び虐待といった事態を招かないために、地域での見守り体制の構築とともに、関係機関が連携し、保護者へのしっかりとしたケアを行うべきだと考えますが、保護者へのケアのあり方について、ご所見を伺います。

5 道徳教育の推進について

 近年、社会の規範意識が薄れ、これはおかしいと感じるような事件が多く発生しています。テレビや新聞において、事件として報道されているものの他にも、近所の人に挨拶をされても挨拶ができない子ども、電車の中で大声で話をする高校生など、自分の周囲の人を思いやることができない子どもたちの姿があちこちで見受けられます。
 また、民間の教育研究機関が小中学校の児童生徒を持つ母親を対象に実施した調査でしたが、母親のしつけに対する関心が徐々に薄れてきているという記事を目にしたことがあります。私は、現在の子どもたちの規範意識や社会性の欠如については、家庭や地域社会の教育力の低下がもたらした一つの現象であると思います。子ども達の範となるべき大人の姿については、しっかりとした検証が必要でありますが、同時に、将来を担う今の子どもたちに対して、規範意識、生命の尊重、相手を思いやる心、人権尊重の精神など、意識や社会性を育てるための方策も不可欠であります。
 本県では、小中高のすべての学校段階において、また、教育活動全体を通じて道徳教育を体系的に進めるとして、「ひょうご教育創造プラン」にそれを位置づけています。現在、本県教育委員会で、「教師用指導の手引き」とともに、「道徳教育副読本」として、兵庫の先人等を題材とする読み物教材の作成に取り組んでおり、来年度には県内すべての児童生徒に配布するとしています。副読本の活用は一方法ですが、私はやはり「道徳」は、机上で文字から学ぶものではなく、実際に体感・体得していくものだと思います。実際の体感・体得があって、それを座学でより深める、そのことに重きを置くべきと考えます。
 子どもたちは、多くの体験活動と様々な価値観との交流の中から、互いに認め合うことで成長し、モラルや責任感を体得していくものです。そのためには、昔から「子どもは大人の背を見て育つ」といわれているように、子どもたちと保護者や地域の人々が、互いに課題を共有し、信頼関係を構築していくことが必要です。
 そこで、ひょうご教育創造プランでは、「体験活動を道徳的実践の場と位置づけ、本県が体系的に実施している体験活動の一層の充実を図るとともに、体験活動と道徳の時間とを関連づけた指導を進める」と記されていますが、この方針はこれまでのどのような成果のもとに打ち出されたのか、また今後、どのような具体的取り組みとして進めていくのか、当局のご所見を伺います。

6 米政策の推進について

 来年度から、食料自給率の向上のために重要な麦・大豆・米粉用米・飼料用米等の生産拡大を促す「戸別所得補償制度モデル対策」が新たに導入されます。主食用米については引き続き生産調整が求められますが、米粉用米や飼料用米は新規需要米として、農家の希望どおり生産することができ、このため、米粉用米や飼料用米の生産拡大が期待されています。
 このような中で、農政環境部では、新年度から米粉パンの学校給食への導入を進めようとしています。これまでは、教育委員会と連携して、米飯学校給食の拡大を進めてきました。文部科学省の通達にも、「学校給食への米飯導入は、栄養に配慮した米飯の正しい食習慣を身につけさす見地から教育上有意義であるので・・・」とありますが、米粉パンの導入は、この教育目的からすると逆効果ではないかと思います。
 私たちの会派では、これまでから学校給食における米飯給食の回数増を要望してきました。またこの委員会においても、岡委員からは企画県民部における県政の調整のあり方で、また上野委員からは学校給食における米飯給食の理念を含むテーマで質疑を行ったところですが、米粉パンは、あくまでパンであって、副食もから揚げやシチュー、ハンバーグといった脂質を多く含むものが中心で、原料はお米といってもまったく別なものです。
 当局の説明では、あくまで小麦パンを米粉パンへ置き換えるとのことですが、週5回の完全米飯給食を目指そうとしている自治体もある中で、その流れに水を注さないかと大変危惧しています。
 米粉パンの学校給食への導入が、米の需要拡大を目的としたものだとすれば、学校給食への導入は余りにも安易な考えであります。学校給食ではなく、それ以外のところで、新たな需要を作っていくよう努力すべきではないかと考えます。
 確かに、米粉は国産米の消費拡大に向けて、新たな市場開拓、販路拡大の布石として期待が寄せられています。昨今の食の多様化、食生活の変化によって、お米の主食に占める割合が年々減少している中では、ご飯としての消費だけではなく、「粉」としての利用の推進を図っていくことが重要であるかと考えます。
 しかし、県民の健康増進という観点から見ますと、「粒」と「粉」はまったく別のものであります。本県は、「おいしいごはんを食べよう県民運動」を全国に先駆けて提唱し、運動してきました。これは、単に米の消費拡大を目的とする運動ではありません。栄養面や安全面から、ご飯を中心とした日本型食生活のよさを見直し、お米を基本とした健康的な食生活を送ることが、日本の農業を活性化させることにもなるという、大きなテーマを持った運動です。米飯中心に魚類、貝類、大豆製品、海藻、さらに野菜をたくさん食べる日本型食生活は、生活習慣病の予防にも役立つことから、ご飯を食べようと普及を図っているわけですから、「粒」であろうと「粉」であろうと、米の消費が拡大すればよいというのはいかがなものかと思います。
 そこで、今一度、この運動の目的を確認し、米飯を中心とした日本型食生活の普及を軸として、その中で、米粉パンも含めて総合的かつ強力に米の需要拡大を推進すべきであると考えますが、当局のご所見を伺います。

7 総合的な交通政策について

 子どもやお年寄り、障害のある方が安心してバスなど公共交通機関を利用できることは、基本的な生活条件の一つであります。これは、都市部から山間部まで、全県に共通する重要な課題となっています。
 現在、県では平成18年に策定した「ひょうご交通10ヵ年計画」に基づき、自動車から公共交通への転換による都市部の環境改善、地方部における公共交通サービスの確保の観点からの公共交通の充実や利用促進方策に取り組んでいますが、来年度は中間年としての計画の見直しを予定していると承知しています。
 そこで、その考え方として、高齢者や障がい者をはじめ、誰もが安全・安心に利用できる公共交通ネットワークの充実に取り組むとのことですが、鉄道や路線バス等の公共交通ネットワークを充実し、持続可能な地域公共交通を実現するためには、バス専用レーンの拡張や交通管制システム適用範囲の拡大など、公共交通優先の施策を、改めて推進する必要があると考えますし、また公共交通ばかりでなく、自転車、徒歩も含む地域全体のモビリティを高めることも重要であります。
 さらに、関係する行政ですが、交通事業者への指導等は運輸行政、道路管理は国・県・市町の道路行政、交通管理は警察行政、まちづくりは都市計画行政、環境に関わると環境行政、高齢者や障害者のことは福祉行政と、多分野に亘っています。
 阪神地域では、交通運輸関係者が協議の場を設け、公共交通の利用について、安全・安心や環境の視点、さらには住民の移動の権利の視点などから総合的に検討し、警察や県民局、各市への申し入れを永年に亘って実施しています。
 そこで、それぞれの行政主体の十分な連携のもとに、今後は、交通事業者、利用者、地域社会など多様な主体の参画と役割分担、連携と協働を、より一層推進していく必要があると考えますが、当局のご所見を伺います。

8 部局横断的行政課題への対応について

 本日取り上げた課題(新規学卒者の就職支援、児童虐待の防止、道徳教育の推進、米政策の推進、総合的な交通政策)は、いずれも単独の部局での取り組みでは解決が難しいものばかりです。これ以外にも、全庁的な取り組みとして対応しなければならない課題は山積していますが、なかには、部局間の連携や施策の整合性が少し足りないのではないかと思われるものもあります。
 この財政の厳しいときだからこそ、限られた行政資源で的確に対応していくために、部局間の連携を図り、相乗効果を上げるよう努める必要があるのではないでしょうか。
 現行の部の編成は、「広範な政策課題に総合的かつ機動的に対応する」ため、大括りにしたということですが、今日の行政課題は、多元的な対応が求められることが多く、組織をどのように再編しようとも、部局間の連携なしに有効な対応はできません。このことについては、岡委員も質問しましたが、企画県民部からの答弁では、「政策会議、経営会議等を通じて、情報共有を進め、幅広い観点から処理方針や政策立案の協議を行う、またサマーレビューなどにおいて次年度の重要施策を協議し、予算の編成過程で最終的な調整を行っている」とのことでした。節目節目のチェックも必要ですが、やはり、関係施策を調整し、一体的に進めていくことが重要ではないかと考えます。
 現在、部局横断的な行政課題への対応については、課題によっては全庁的な横断組織を設置するなどの取り組みをされていることは承知していますが、そのような執行体制での対応も含め、県政における施策や事業の調整機能をより一層強化する必要があると考えますが、これについての知事のご所見を伺います。

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