掛水すみえ議員が質問(決算審査・教育委員会)を実施

第310回9月定例会 決算特別委員会質問 (教育委員会)
2011年10月18日(火)

1 県立高校の役割について

(1) 県立高校の中途退学対策について

 社会・経済状況が悪化し、高校生の就学環境が悪化しています。このことは、生活保護対象世帯も年々増加傾向にあることや、本県の高等学校奨学資金貸与事業の利用者が増えていることからも、窺い知ることができます。
 2010年の学校基本調査によれば、15,553人の高校卒業者、19,332人の大学卒業者が短期雇用の職に就き、また、大学の卒業生総数の16%にあたる87,174人の若者が就職も進学もしていない状況であり、若者の雇用状況は極めて厳しい環境に晒されています。
 義務教育を終了し、晴れて高校の門を潜った時には、自身の将来像を描き、とても晴れがましく、また、自分の可能性を信じる時だったと思います。高校進学率も97%を超える状況であり、だれもが高校教育を受ける状況となっています。
 しかしながら、毎年報告される長期欠席者数や中途退学者数の状況を見るたびに心が痛みます。昨年度、連続ないしは断続して30日以上欠席した長期欠席者は1,585人に上っており、そのうち、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある不登校は850人となっています。
 また、中途退学の状況は1,321人となっており、率にして1.44%となっています。中途退学の主な理由は、進路変更44.6%、学校生活・学業不適応37.1%となっており、学年別の状況は、第1学年が1.5%で415人、第2学年が1.0%で271人となっています。また、学科別では、専門学科・1.8%、普通科・0.7%、総合学科・0.8%となっています。
 中途退学した原因については、「進路変更」や「学校生活・学業不適応」の割合が高くなっており、高校中退後、別の高校への編入や就職をすることとなりますが、社会全体が就職難となっているような状況のなか若者の就職も決して楽な状況ではありませんし、ましてや高校の中途退学者はとりわけ厳しい状況であり、中途退学後、概ね2年以内に正規雇用に至る割合は,働いている者のうち、2割弱であり、無業者である割合も約3割に上ります。新たなスタートを切ってくれることを願うばかりです。
 中途退学への対策については、実際に中途退学した生徒から原因を調査し、また、一定期間ごとに追跡調査を行い、課題を把握していく必要があると考えます。
 そこで、県立高校における中途退学の防止策について、これまでどのように取り組んでこられ、課題をどのように認識し、今後どのように解決していこうとしているのか、ご所見をお伺いします。

(2) 多様化する学科と教育の質の保証との両立について

 高校教育は、進学率の上昇に伴って、昭和60年代以降、生徒の個性や能力に応じた教育システムへの転換が進められ、本県でも、学校選択の幅を広がるよう、普通科や専門学科の特色化や総合学科、単位制、さらには中高一貫教育校や新しい専門高校の設置を行うなどの高校教育改革を進めてこられており、カリキュラムが多様化すると共に、生徒の学習機会も多様なものとなっています。
 その一方で、昨年度の高校進学希望調査を見てみると、国際文化系コースの希望者の募集定員割れを起こしていることが顕著となっている他に、普通科においても地域によっての偏りが見られます。
 現状の多様化する高校教育において、どのように教育の質を保証していくのかが課題となります。このまま、個性やニーズに対応しての多様性を維持していくのか、それとも、現在の多様なシステムを整理し再構築するのかの選択が迫られているのではないかと感じています。
 国際学習到達度調査等の結果からは、日本の生徒では「読解力」「数学的活用力」「科学的活用力」の不足や低下が問題となっていることから、今後の高校教育では、知識・技能の習得に加え、知識・技能を活用する学習活動を重視した、確かな学力と生きる力の育成が急務であり、基礎的・基本的な学力を身に付けることができるような教育を重視する必要があると考えます。
 そこで、生徒の生活スタイルや価値観が多様化しても、高校本来の目的である自立した社会人として、生きていくための能力・規範意識・生活設計能力を高校段階で身につけさせるためには、学習意欲の向上や学習習慣の確立は欠かせないと考えますが、県立高校における学科の多様化と教育の質の保証の両立について、どのように認識されているのかご所見をお伺いします。

2 キャリア教育における労働教育の充実について

 文部科学省が「キャリア教育」という言葉を使い始めたのは、1999年の中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続改善について」からであると言われており、フリーターや就職後3年以内の離職率が高くなってきたことから、学校教育と職業生活との接続への課題認識がその始まりであります。
 2008年に厚生労働省が実施した、「労働関係法制度の知識の理解状況に関する調査」によれば、労働条件が募集時と異なるとか、法定の休憩時間がとれないなどアルバイト先で遭遇した諸問題について「何もしなかった」と答えており、その理由として、「対処するのが面倒だったから」「どうせ何も変わらないから」「どうしたら良いか分からないから」となっています。あまりにも無防備でありますが、そのほとんどが一定の知識があれば、解消できるものであると思われます。
 最近では、若者が無防備で社会に放り出されないように、労働法を含めた労働教育の重要性が言われるようになり、今年の1月31日に中教審より答申された「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」においても、重視すべき教育内容として「経済・社会の仕組みや労働者としての権利・義務等についての理解の促進」が記載されています。
 先の厚生労働省の調査における、15歳~24歳の男女大学生・高校生に調査した労働法の理解度の調査によれば、「男女雇用機会均等」・「育児休暇」「団結権」といった用語は授業で教わり、意味が分かるようですが、「未払い賃金の請求権」「就業規則」「労災保険」「雇用保険」といった、アルバイト労働から直接関係が深い用語に関する理解の低さがわかります。
 本県では、阪神・淡路大震災の教訓や1997年の神戸連続児童殺傷事件を機に中学2年生を対象にトライやる・ウィークが始められましたが、トライやる・ウィークの実施は、単なる就業体験ではなく、自分が住む地域を知り能力を発揮できるものとして定着していますが、実施前後に働く意義もあわせて授業に取り入れていると聞きます。
 小学校段階では、男女平等の視点から、低学年の生活科では、単なるお手伝いではなく家族における自分の仕事として積極的に自分の役割を果たすための実践や高学年では女性のM字型雇用について授業で取り上げていますが、すべての小学校で実践されているわけではありません。また、高校では、トライやるワークやインターンシップなどの事業が推進されていますが、先に質問しました中途退学者に届いているのか確かではありません。
 他府県において、ある全日制普通科高校の授業実践について聞く機会がありました。この高校ではアルバイトで働く者が大半を占め、家庭の経済状況が厳しい中、学校生活を続ける上で必要な経費をアルバイトにより捻出している状態だったので、教師が、最低賃金のことについて話すと、最低賃金以下の時給の生徒が早速、使用者と交渉し、時給が上がった事例がありました。この生徒は、法律が自分に関わりがあることを実感し、その後の学習への取組み態度に変化が見られたそうであります。
 キャリア教育には、重要な労働法をはじめとした、労働者の権利や多様な生き方を知ることや、知識だけでなくトラブルに直面した際の解決法や相談窓口について紹介など、実際に権利が侵害された時どう対処していくのかなど社会の中で孤立しないようにしていくことが求められます。
 そこで、社会人・職業人として自立していくには、社会で直面する様々な課題に柔軟に対応できる能力が求められることからキャリア教育において、各教育段階に応じた労働教育の充実を図っていくべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

3 特別支援教育の検証と課題について

 1994年ユネスコでインクルーシブ教育が提唱されました。インクルーシブ教育とは、分け隔てない教育であり、全ての子どもが関わりながら一緒に生活・学習すべきという考え方です。共に学びあえる学校こそすべての人達にとって最善の社会をつくるベースであるとしています。2003年、文部科学省は今後の特別支援教育の在り方の中で障害のある子どもは養護学校・障害児学級籍と固定的に考えず全てのこども達が通常学級に在籍できることを可能とする「特別支援教室」の構想を発表しました。その後の、2007年には、特別支援教育がスタートしましたが、当初の共生・共学実現の方向性は中途半端な形でしか制度化されず、特別支援教室構想は実現していません。
 2007年4月の文部科学省通知は、特別支援教育の基本理念として、自己や社会参加にむけた主体的な取り組みを支援する視点に立つとあり、一人一人の自己選択・自己実現への取り組みを支えることの重要性が書かれています。今、特別支援教育がもたらしたプラス面は、教員一人でなくチームで相談にとりくむようになったこと、校内委員会やコーディネーターなど職員全体でこども達のことを考えることがあげられています。その一方で、特別支援学校・学級通学者数は右肩上がりで増加しており、規模過大校の解消や生活・学習の困難を改善・克服するために学校生活の仕組みや学級の雰囲気を変えていく必要があるなど、克服すべき課題もまだまだ多くあります。
 例えば、学校図書館の蔵書はこども達の感性の沿ったものが備えられているか。また、将来の就労を見据えた学習ツールは揃っているかなど、こども達が本来持っている力をきちんと発揮できる環境を整えていく必要があります。
 そこで、特別支援教育としてスタートして4年が経過しましたが、これまでの特別支援教育の取組状況に対してどのように評価しているのか、今後解消していくべき課題とあわせてご所見をお伺いします。

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