竹内英明議員が質問(決算審査・健康福祉部)を実施

第310回9月定例会 決算特別委員会質問 (健康福祉部)
2011年10月12日(水)

1 災害援護資金貸付金について

 決算書の県の財産「債権」に記載されている「災害援護資金貸付金」がある。このうち県が市町を通じて阪神・淡路大震災の被災者に貸し付けた貸付金の残額は3月末現在75億円となっている。ちなみに政令指定都市の神戸市は独自で貸し付けているが、こちらは127億円、合計で202億円である。
 県が所管する75億円を調べてみると既に死亡等で免除となった分は既に除かれた金額ということである。当初の償還期間が10年という契約だから、現状で未償還額があるというのは、その全額が滞納による未収金ということである。この75億円のうち3分の2にあたる50億円は国からの貸付であり、未収金も含めて全額を国へ返済することとなっているということだが、未収分は県ではなく、市町が全額を返済するルールと聞いている。
 返済期限は平成18年に5年、23年にも3年延長され、小口で返済している人もいるが、償還額は年々落ち込み、22年度は4億円ほどである。国に対して東日本大震災と同様の免除要件の緩和を求める声もあるが、返済を終えた人の中には、生活が苦しくても人に借りたものは先に返すという努力した人もいただろう。後でルールを変えると問題もでてくる。いずれにしろ国が判断することだが、一方で、お金があるのに返さないという人はいないのか。
 神戸市を除く県内の未償還分75億円については5508件(人)にものぼるというが、財産があっても返さないという悪質な滞納者にはいかなる対応をしてきたのか?
 いずれにしろ国から県が償還を求められれば、県債の償還に応じなければならない。国もお金がない。県も市町に償還を求めていくことになるが、まず神戸市127億円を除く、未償還金額の多い3つの自治体とその金額を教えてほしい?
 今後の回収にもよるが、市町が県に答弁のような金額を償還するということになる。国や県は免除となった金額については一定の比率で損失を引き受けたことになるが、残りの債権は全て市町に委ねられる。
 その時点で、免除にならず滞納している金額が市町の債権として確定し、やはり最後まで残った債権ということでその自治体の負担もほぼ見える。市町の住民が当制度の採否を選択できたものではないのに、最終的な負担は市町ごとになる。全体額もさることながら住民1人当たりでみるとまた異なる。
 そこで住民1人当たりの未償還金額について上位3自治体と1人当たりの金額を教えてほしい

2 安心こども基金について

 少子化がいわれている一方で保育所の待機児童があるという。他方、幼稚園へ通う児童は減少してきている。そんな中、本県は、保育園・幼稚園という従来の省庁縦割りに風穴をあける認定こども園の数がH23.4.1現在で60施設と全国2位となり、大変頑張っている。
 保育所への待機児童数を調べると、23.4.1現在で県所管で229人、神戸市・姫路市・西宮市・尼崎市の政令市・中核市で842人の合計1071人となっている。
 「安心こども基金」といえば、国から20年度45億、21年度72億、22年度62億と合計179億円の交付金で造成された。22年度末の残高を調べてみると、決算書には「安心こども基金」として164億円が残っている。ここから22年度の事業費56億円を支出し、5月末の残高108億円とる。
 22年12月補正と2月補正で62億追加されたばかりとはいえ、交付額の約6割が残っている。基金を使った事業の期限は当初の22年度から23年度まで延長(繰越で24年度も)されたとはいえ、待機児童を解消するための定員拡大に必要な保育所等緊急整備事業等には市町の負担(や施設の自己負担)がネックとなり、県が進めようとしてもなかなか進んでいない。特に、待機児童の多い神戸市や西宮市の計画が進まず、21年度では県の予算を大きく減額するなどしたことは県議会でも話が出ていた。
 大阪府などではこの基金が使われない理由を国がこと細かく基準を定めているなどと批判しているようだが、実際は、都道府県は保育所整備等の基金事業に随伴補助する義務がなく自己負担がない。いわば国と市町、施設で整備費を負担することとなっている。県も実質的な負担がないから市町に強く言いにくい。これが基金が残っている一因でもある。しかし、事前に聞くところによると国もこうした話を聞き、基金を通じた国の負担率1/2から2/3に嵩上げし、逆に市町の負担が1/4から1/12に減ったことで、事業が進捗するという話も聞いている。
 23年度も第2四半期を過ぎ、神戸市や西宮市等の動きや見通しも見えてきたと思うが、今年度の基金の活用見込みはどのくらいになりそうか、また、基金の来年度以降の見通しはどうか?

3 生活保護の不正受給について

 本県の生活保護の実態を調べてみると、県全体の1000人当たりの保護率は10年前の平成13年度の平均10.9から今年23年7月の18.3へと10年前と比べても約1.7倍(1.68)に増え、10万2211人の方が保護を受けられている。
 生活保護の事務については、市は単独で福祉事務所を設置し、兵庫県は町、郡部の6福祉事務所を設置している。直近の23年7月の県所管の郡部では、保護率は宝塚(猪名川町)の1000人当たり1.6から新温泉町の5.4まで差はあるものの、県全体の平均18.3よりかなり低い。一方、福祉事務所を単独で設置する市では、三田市の2.5から尼崎市の38.2まで、その差は15倍と県内の市の中でも格差が非常に大きい。
 我々地方議員は住民の方と接する機会が多いが、近年よく聞くのは、この生活保護制度についての不満の声である。働けるのにもらっているとか、外車に乗っているのに、とか。メディアでも、「働くより生活保護の方が高い」とか「年金より高い」とか聞こえてくる。
 厚生労働省のHPに「平成23年度 地域別 最低賃金額 改定の答申について」という記者発表資料が掲載されている。「(最低賃金の)全国加重平均額は737円、生活保護水準との逆転現象の解消進む」とタイトルがうってある。これを見たら、働くより生活保護の方が多くもらえてきたのかと思われる。かなり違和感がある表現である。
 実際に同省の調査では、最低賃金が生活保護を下回る地域は北海道、宮城、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、広島の9都道府県あったという。兵庫県もである。
 それが、今年の最低賃金審議会で調査され、この10月から地域別最低賃金額の改定が行われ、兵庫県の最低賃金は739円(+5)となり、逆転していた9都道府県のうち、兵庫を含む6都府県で逆転を解消したという。
 最低賃金に近い金額で働いている人は結構多い。この話をどう思うだろうか。
 最低賃金以外の、年金についてはどうなのか。
 自営業などで、国民年金にだけ加入してきた方で、20歳から60歳の40年間に全期間保険料を納めた方は、満額の老齢基礎年金を65歳から受給できる。平成23年度の老齢基礎年金は満額で月額65,741円。
 これに対して、生活保護の受給者が受け取る、日常生活に必要な費用「生活扶助額」は65歳の単身者では、県内では物価等の高い神戸市など都市部在住者の一番高いところで79,530円。物価の安い南あわじ市など一番低いところで61,640円。老齢基礎年金は満額65,741円だから、生活扶助だけでも既に逆転現象が起こっていることがわかる。生活扶助というのは一部であり、医療扶助やそれに伴う公費負担を含めた平均額では、完全に逆転する。
 大阪では生活保護の仲介をして保護費をピンハネをするという「貧困ビジネス」業者の存在や、奈良では病院で必要のない手術をしたことにして、自治体がその手術費用の全額を生活保護費から支払っていたという不正も報道されている。
 生活保護は必要な制度であると思うが、しかし、制度について住民の信用を損なわないようにしなければ制度の存続にも支障をきたす。不正受給などには厳正に対処しなければならないが、大阪など他府県の事例がよく報道されているが、本県の事例についてはあまり聞かない。ここで不正受給について確認しておきたい。
 22年度に悪質な「生活保護法第78条」「不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるとき」にあたる不正受給等の事例が県全体で何件でいくらあったのか、具体的な事例も含めて説明してほしい。また、それが全体支給額の何%にあたったのかもあわせて説明してほしい。

4 結核病床の地域偏在について

 結核について、県のHPをみると「人々の健康を脅かす世界3大感染症(結核、エイズ、マラリア)の一つで、現在でも、日本では年間23,000人以上もの方が発症~。決して過去の病気ではありません。(兵庫県でも)○平成22年の1年間で約1,100人の方が結核を発病。○人口あたりの発生数が全国ワースト5位。○新たに結核を発病する方の半数以上は70才以上の高齢者。」云々と…。
 正岡子規や石川啄木など明治期に結核で死んだ文豪は知られているが、治療薬が発明され、不治の病ではなくなったとはいえ、最近でもタレントJOY(ジョイ)さん、お笑いタレントのハリセンボンの箕輪はるかさんら若い有名人も感染を公表し入院治療等を行っている例が報道される。
 県では、「結核患者に対して、その同居者などに結核を感染させるおそれがある場合に、結核指定医療機関に入院することを勧告する」とのこともHPに記載されているが、どこの病院に入院できるのだろうか。
 結核病床を有する第二種感染症指定医療機関は公表されているが、本県では、
 兵庫県立淡路病院26床(洲本市)
 西神戸医療センター100(50)床(神戸市)
 谷向(たにむかい)病院60床(西宮市/阪神南)
 国立病院機構兵庫中央病院100床(50)(三田市/阪神北)※丹波
 国立病院機構兵庫青野原病院50床(0)(小野市)
 公立八鹿病院 7床(養父市/但馬)
 このほか、県立淡路病院1床、赤穂市民病院 8床、赤穂仁泉病院 1床(精神)の3病院に計10床のモデル病床があり、「高度な合併症を有する結核患者又は入院を要する精神病患者である結核患者の収容治療を行っている。とのこと。
 しかし、この中で、小野市の兵庫青野原病院の50床は19年9月から休床中で、実は、今現在、播磨全域に高度な合併症と精神病のモデル病床以外の通常の結核病床が全くない。
 東・北・中・西播磨の各二次医療圏は、人口は186万人と県全体の33%、平成21年の新登録結核患者は全県1226人中338人で、27.6%。地域偏在が顕著というか、あまりに偏在過ぎるのではないか。
 保健医療計画を策定する兵庫県として現状の地域偏在をどう考えているか? また、これまでどのような取り組みをしてきたのか?

NEWS

一覧を見る